リテール大革命

小売業が「値引き」以外で売れる体制を作るには? 現地調査をして分かったこと(3/3 ページ)

» 2024年05月31日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]
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必要なのは「三位一体」

 今回はアナログに調査をした、ほんの一部の店舗、かつ数少ない商品で比較をしました。小売業の経営において、こうした違いを全体に波及させるには、アナログな作業では物理的に不可能です。中でもどうやって競合の価格を調査するのか、その後の最適なアクション(価格設定など)をどのようなロジックで組み立てるか、という点は最大の障壁となるでしょう。

 店舗スタッフに競合の価格を調査してもらっていては、日々の業務負荷が増大してしまい、運営面で課題が生じます。他社のチラシデータを取得して比較しようにも、あくまで見られるのは一部分であり、自社が比較したいカテゴリーや商品が欠落していることもあります。

 そこで、全店舗の商圏人口や人流データと、自社の販売データを分析し、低価格指数を店舗ごとに設定するのが有用です。その上で各店舗でさまざまな価格設定を行った結果を検証して、自社なりの価格ロジックを構築していくことが現実的な選択肢かもしれません。

 小売業界ではダイナミックプライシングが大きな注目を集め、大手各社が取り組みを進めています。しかし、確実な手応えをつかめている企業はまだ少数というのが実情です。店舗という特性上、どうしてもテクノロジーだけで必要な事項を網羅できず、人的対応との融合が求められるとともに、自社独自の価格成功モデルを設計する高いスキルを要されるからです。値引きでしか売れない事態に陥らぬよう、戦略的な考察とデジタル技術活用の両立を図らなくてはなりません。

 こうしたことを実現していくには「小売の価格戦略に強いコンサル会社」「小売のダイナミックプライシング実績を保有しているIT企業」「自社の戦略を多角的に考察できる人材(内部リソース)」、これらの三位一体を大前提に、外部を交えて共同プロジェクトとして推進していくことが必要なのではないでしょうか。

 今後も価格戦略は小売業の最重要テーマの一つです。ぜひ、各部門の重要商品の価格分析からスタートして現状を可視化することで、社内の動きを活発化させていくことを推奨いたします。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

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