生成AIでデジタル戦略はこう変わる AI研究者が語る「一歩先の未来」
【開催期間】2024年7月9日(火)〜7月28日(日)
【視聴】無料
【視聴方法】こちらより事前登録
【概要】元・東京大学松尾研究室、今井翔太氏が登壇。
生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。
この記事は、井上篤夫氏の著書『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫、2024年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。
2016年12月6日、孫はトランプ米次期大統領と会談を行った。同年9月に英半導体設計会社アームを買収、テクノロジー業界のキーマンとしての孫の名を世界に知らしめることになる。
「ひとりのリーダー、ひとりの天才が人類の未来を劇的に変える」
孫の確たる信念である。2016年12月5日、未来を創る若者に自らの才能を開花できる環境を提供するために孫正義育英財団を設立した。AIが人類の知的活動の大半を置き換えていく未来がくる。
「人類は仕事をする。仕事をするというのは働く。働くって何だ、仕事をするって何だ、考えるって何だと。汗水垂らして働く、それは筋肉を使っている。昔は奴隷のような人たちがピラミッドを作ったり、お城を作ったりしていた。いまはほとんど、トラクターだとか、キャタピラーだとか、クレーンだとか、そういう筋力を使っていたような仕事は、機械がやるようになっている。工場の設備も、機械に頭脳がついていって、筋肉を使うのはメカトロニクスにどんどん置き換わるようになる」
「労働する人たちには、大きく分けるとブルーカラーとホワイトカラーがいた。ブルーカラーは主に筋肉を使い、ホワイトカラーは主に頭を使う。すると今度は、メタルカラーが生まれた。メタルカラーは、筋力と頭脳の大半を融合したようなもの。それがAIロボット」
「AIロボットが、大半のブルーカラーとホワイトカラーがやっていた仕事を肩代わりするようになる。人間より上手にこなしたりする。そのメタルカラーはかならずしも2本足で2本の腕とは限らない。腕が100本あってもいい。頭にヘリコプターのようなプロペラがついていてもいい。ドラえもんみたいになっちゃうかもしれない」
しかし、メタルカラーがホワイトカラーとブルーカラーの仕事の大半を置き換えていく時代がきたら、人間は働くということをしなくなるのか、しなくてもよくなるのか、虚(むな)しくなるのか。
「だから、人間とは何ぞや、働くとは何ぞやという、最後、そこにディベート(議論)がくると思う。そのとき、最後に、ぼくは、たったひとりの人間が、人類のライフスタイルを変えると思う」
作家。1986年にビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、テッド・ターナー(CNN創業者)を単独取材した。1987年、孫正義を初インタビュー、以来37年余にわたって密着取材を続けている。『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社)はベストセラーとなり、英語・韓国語に翻訳された。『志高く 孫正義正伝 完全版』(実業之日本社文庫)2010年オーディオブックアワード ビジネス書部門大賞受賞。『志高く 孫正義正伝 新版』(実業之日本社文庫)『事を成す 孫正義の30年ビジョン』(実業之日本社)『孫正義 事業家の精神』(日経BP)『とことん 孫正義物語』(フレーベル館)、『フルベッキ伝』(国書刊行会)は2023年日本英学史学会 豊田實賞を受賞。『ポリティカル・セックスアピール 米大統領とハリウッド』(新潮新書)『追憶 マリリン・モンロー』(集英社文庫) 『素晴らしき哉、フランク・キャプラ』(集英社新書)ほか。訳書に『マタ・ハリ伝 100年目の真実』(えにし書房)『今日という日は贈りもの』(角川文庫)『マリリン・モンロー 魂のかけら』(青幻舎)などがある。
「ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、ジェンスン・ファンにイーロン・マスク。一握りの人間が、人類の未来を変えることを起こす。産業革命のときもそうだった。エジソン、ヘンリー・フォード、ロックフェラーもしかり」
「そういう一握りの人間が革命期に大きな世の中のパラダイムシフトを起こす。AIの未来がきたとき、いまから50年後、100年後に、最後のこの一握りの人類代表としてAIをさらに超えていくような、AIと共存できるような、有益な問題解決をしてくれるような人物が、必ず出てくる。だからぼくは、AIが人類の敵になるとは思っていない」
メタルカラーおよびAIは、人類の良きベストパートナーとして寄り添って進化していく。そのAIをさらに進化させるような人類代表。ほんの一握りのスーパーヒーローが新しい時代を常に切り開いていく。これは、一般的な、平均的な学校教育から生まれるものではない。
これまでも、誰でも平等な教育機会を与える仕組みは世の中にあった。そうではなく、人類を代表するような、最後の一握りのものを作るには、若いときから、とがった、異能の子ども、異能、異彩な能力を持った子どもたちに、最強の教育機会というものを提供する必要がある。
「その刺激を、われわれが作った。もちろん、ここから生まれるとは限らない。ただ、われわれがそういう努力をしていくことによって、なるべく似たようなことをほかの人もやってくれれば、なおベターです。少なくともそういう思いだとか、能力のある子どもに対して、本来、誰でも、いつでも、好きなだけ異能をさらに研ぎ澄ますような教育機会を与えることができれば、少しは貢献、後押しすることになるんじゃないかという思いがある」
国の税金で全ての人々に等しく教育機会を与えていかなければいけないという、公共的なものとは違う。平均的な、税金で賄う公共的なものとは一線を画する。
「だから、ぼくが少しでも貢献する存在意義があるのかなというふうに思った」
孫の強い思いが、孫正義育英財団には込められている。青野史寛(孫正義育英財団・業務執行理事)は言う。
「孫はまるで、孫(まご)を見るようなまなざしを見せる」
孫正義育英財団の趣旨。
「高い志と異能を持つ若手人材に自らの才能を開花できる環境を提供し、人類の未来に貢献することを目的として、ソフトバンクグループ代表 孫正義が2016年12月に設立しました。高い志と異能を持つ若手人材が、新しい価値観や最新のテクノロジーに触れることや仲間と交流することなどにより、自らの可能性をさらに広げ、未来をつくる人材へ成長するための支援を行っていきます」
財団設立前、青野は源田泰之(孫正義育英財団事務局長)と話していた。10代で起業したり、ロボット開発の国際大会で入賞したり、天才的な若手人材がいる。そのことを伝えると、孫はすぐに「会いたい」と言った。
2015年の孫との会食の場に参加したのは7人。ホワイトハッカー(コンピュータやネットワークに関する高度な知識や技術などを善意の目的に生かす)の国際コンテスト入賞者もいる。会場でドローンを飛ばす者もいた。
孫は椅子からころげ落ちるかと心配するほどからだを揺らせて喜んだ。「すごい、すごい」を連発した。声も裏返っている。個人で、全面的に応援したい。孫は決めた。
「将来、地球、世界を変えていく。ピュアに応援したい」
「彼らのやりたいことをやらせたい」
「人と人をつなぎ合わせる」
「驚いた」
「みんなの可能性がうらやましい。無限の可能性がある。自分を信じてほしい。人に役立つことをしてほしい」
孫の趣旨に、ノーベル生理学・医学賞を2012年に受賞した山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所名誉所長・教授も賛同した。山中は画一的な日本の教育の在り方に、孫同様の疑問を抱いていた。
「彼らには無限のチャンスがある」と山中が言うと、「それだ!」と孫は答えた。30分の面談時間が2時間に及んだ。
2018年、国民栄誉賞受賞の史上最強の棋士、羽生善治(はぶ よしはる)九段のAIに対する研究や探究心に孫は驚いた。さらに、日本の大学の最高峰、東京大学の五神真(ごのかみ まこと)総長(当時)らが財団の趣旨に賛同した。
また、自らが起業家であり、スタートアップを育てる投資、人材育成を行うMistletoe(ミスルトウ・現Mistletoe Japan)を創業した孫の実弟・孫泰蔵も賛同し、財団の評議員になった。2020年7月1日の時点で、これまでに支援した人材は219人で、最年少は9歳、最年長29歳。
2020年7月に認定された第4期支援人材には、数学の大会で多数の受賞歴がある小学生や、企業との共同プロジェクトでAIツールを開発した経験のある高校生、パーキンソン病の正確かつ安価な早期発見システムを開発した実績を持つ大学生など、さまざまな分野において高い志で取り組む異能を持った若手人材が選ばれた。
主な支援内容は、交流の場の提供と支援金給付である。
交流の場の提供については、東京・渋谷に財団生専用施設Infinityを開設し、財団生同士が交流できる場を提供している。また財団生の研究内容を紹介するイベントなども開催している。これまで、財団生同士の共同研究やプロジェクトも誕生した。支援金給付については、進学・留学に限らず、将来経験したいことや今後成し遂げたいことを応援するための支援を一人一人検討している。なお、2019年3月〜2020年2月の1年間における個人に対する支援金合計は約5億7573万円。
「日本にもアインシュタイン型の若き天才がいる」と山中教授に言わしめる若者が財団にいる。2020年12月21日、孫正義育英財団の懇親会がオンラインで行われた。国内外から約90人の財団生、理事、評議員、監事が参加した。この日、活動報告プレゼンテーションを行ったのは7名で、英語と日本語で行われた。どれも独創的で素晴らしいものだった。
「涙、出そうだね。いちばん感動しました」
代表理事の孫はこう言ったあと、プレゼンテーションの感想を述べた。
「14歳で、がんの細胞を発見する機器の試作機まで作ったのはすごいね、国際的にもそういう場ができてきたのはうれしい。AIを使った自動運転のドライビングも面白い。みな面白いテーマばかり。ほかの財団生も刺激になると思うし、今日もみんな参加していると思います。たくさんすごく勉強になる。おたがいに自分と同じ年齢の子どもたち、学生同士が、世界の最先端の研究だとか開発だとか、いい刺激になると思うんだよね」
孫は自らの体験も熱く語り、財団生を激励した。
「優れた最先端の可能性を、もともと異才、異能を持った君たちが、教育の機会を得られるというのは大切なことだと思う。ぼくも16歳でアメリカに留学して、ものすごく刺激になりました。自分の脳が、自分にとっての非日常に触れて、刺激される。友達と触れ合い、先生と触れ合い、新しい環境や新しい研究テーマが自分の目の前に現れるだけで、脳がしびれるという活性化があらわれてくる。脳がしびれるというのが脳にとって最大の快感であり、脳が喜ぶことこそが最大の成長であって、脳が興奮する、それが喜びになる。しかもそれが多くの人々の役に立つとかということであれば、もっといい。可能なかぎり支援をしたい。皆さんは人類の宝。その代表だと思います。まだ、われわれが見つけきれていない若い諸君もいると思いますけれども、どんどんわれわれの活動を広げていきたいと思います。ぜひ、継続してがんばってください」
この記事を読んだ方へ 生成AI×ビジネスを見据える
元・東京大学松尾研究室のAI研究者、今井翔太氏が「ITmedia デジタル戦略EXPO 2024 夏」に登壇。
生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング