今回の買収における「イオン北海道」「ゆめマート熊本」(イズミ)両社の大きな目的は、いずれも「都市部における経営基盤の強化」であるといえる。
近年、地方の郊外エリアでは少子高齢化が深刻な問題となっている地域も少なくないうえ、ディスカウントストアやドラッグストアの増加により業種を超えるかたちでの大型店同士の競争が激化している。それに伴いイオン北海道とイズミグループはともに「営業エリア内の大都市圏における経営基盤の強化」を進めていた。
例えばイオン北海道は、2012年に札幌都市圏でミニスーパー「まいばすけっと」の展開を開始したほか、2023年には札幌市豊平区の地下鉄駅前にある食品スーパー「マックスバリュ平岸店」を建て替え・増床して「イオン南平岸店」に。同じく2024年には札幌市白石区のJR駅近くにある食品スーパー「マックスバリュ北郷店(旧・ジョイ北郷店)」を建て替え・増床して「イオン北郷店」に業態転換するなど、札幌都市圏での経営規模の拡大戦略を採っている。特にまいばすけっとはわずか12年間で札幌市内に42店舗(2024年4月時点)を展開するほどの規模となっている。
一方のイズミも、2015年に北九州都市圏を中心に展開する食品スーパー「スーパー大栄」(現:ゆめマート北九州)と、広島都市圏・北九州都市圏を中心に展開する「ユアーズ」(当時の本社:広島県海田町、北九州エリアのほとんどの店舗は旧「丸和」)を相次ぎ傘下に収めるなどしている。
イオン北海道が買収する西友の店舗は9店舗全てが札幌市内に、ゆめマート熊本が買収する西友・サニー69店舗のうち41店舗が福岡市内にあるほか、熊本市や長崎市の中心部近くに立地する店舗もある。
特にイズミグループは、これまで述べた経緯により北九州都市圏や熊本都市圏には多くの店舗を擁するようになっていたものの、九州きっての成長都市である福岡市内には、いずれも市内東部にあるショッピングセンター「ゆめタウン博多」(福岡市東区)と食品スーパー「ゆめマート筥松(旧スーパー大栄)」(福岡市東区)の2店舗しかなかった。それゆえ、イズミグループにとって福岡都市圏における店舗網の拡大は悲願であった。
今年(2024年)2月には、イトーヨーカドーが北海道・東北・信越地区からの全店舗撤退を発表。今回の西友の北海道・九州撤退と合わせて、地方におけるスーパー経営の厳しさが浮き彫りとなった。
こうしたなか、大手ディスカウントスーパー「ロピア」は、イトーヨーカドーの複数の閉鎖店舗(おもに食品売場)を引き継ぐことを発表。これにより、未出店地域への店舗網拡大の足掛かりとしたい考えだ。
今後も、こうした大手スーパーによる「地方店舗の閉店」と、それによるスーパーマーケット業界の再編は避けられないとみられ、人口減少社会のなか「パイの奪い合い」が続くことになるであろう。
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