以上を踏まえると、会社としてはできる限り退職代行を利用されないように努めるのが賢明です。しかし、意に反して利用されてしまった場合、会社にとって課題改善に取り組むチャンスと受けとることもできます。
社員に退職代行を利用された事実は、会社が課題を抱えていると教えてくれている警告です。それなのに「退職代行なんか使いやがって、ふざけるな!」と社員を責めるだけで自らを省みないようでは、先に示した5つのデメリットを甘んじて受け入れざるを得ません。
一方、メリットが大きいとはいえ社員側にとって危険なのは、退職代行をイヤなことを代わりに引き受けてくれる便利なサービスと位置づけてしまうことです。退職代行があるから「会社がイヤになっても気軽に辞められる」などという認識が生じると、退職代行のリピーターになりかねません。実際に、退職代行サービスの中には、「リピート割引」などを用意するものもあるようです。
しかし、そこにはさまざまなリスクが生じます。
そもそも、退職代行を利用しなければならない状態は、会社だけでなく社員にとっても不幸です。社員にとっては、会社選びを間違えなければ退職代行を利用する必要がありません。退職代行をリピートするということは、誤った会社選びを繰り返してしまっている証拠です。
先出のエン・ジャパンの調査によると、退職代行の利用者は年代が上がるごとに20代:5%、30代:2%、40代以上:1%と下がっていきます。年代が低いうちは退職しても次の就職先が見つかりやすいかもしれませんが、年齢が上がるにつれそうもいかなくなります。やがて退職代行の利用に伴うデメリットがツケとなって溜まっていき、後々自らを苦しめることにもなりかねません。
その一方で、中にはパワハラが横行しているような酷い環境の職場もあります。そんなブラックな会社との間に支配従属関係ができあがってしまっている場合など、直接退職を申し出ることが難しいような特殊なケースでは、退職代行という選択肢が大いに救いになるはずです。
退職代行は便利だからと何度もリピート利用するものではなく、会社選びに失敗した際などに緊急避難するための最終手段として認識しておくのが程よいサービスなのではないでしょうか。
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