――では日本企業がERPを成功させるためにはどうしたらいいのでしょうか?
廣原氏: 正直言って、日本企業にグローバルスタンダードのERPをそのまま導入するのは、かなり難易度が高いと思います。私も前職のワークスアプリケーションズ時代に相当努力しましたが、やはり限界がありました。
――具体的にはどのような限界があったのでしょう?
廣原氏: 原因の根本は、日本の商習慣である「締め請求」だと思います。これに対応しようと思ったら、ERPを根本から作り変えるしかありません。それは、もはやカスタマイズの域を超えています。結局、日本の商習慣に合わせた「日本版ERP」をイチから作り上げるようなものですから。
――なるほど。そこまでやっても、結局はグローバルスタンダードにはならないと。
廣原氏: そういうことです。だから、今のマネーフォワードのクラウドERPでは、アプローチを少し変えています。全ての日本企業に無理にグローバルスタンダードを押し付けるのではなく、企業の成熟度に応じて分類し、ERPの導入方法を変えていくという戦略ですね。
――成熟度というと、具体的にはどのように分けているのでしょうか?
廣原氏: 大きくは、成長企業と成熟企業の2つに分けています。成長企業というのは、ここ15年ぐらいに設立されたスタートアップ企業です。これらの企業では、サブスクリプションモデルなどグローバル標準の商習慣を取り入れていたり、人事評価制度や給与体系などグローバルスタンダードに近い手法を取っていたりしています。だから、こういう企業だとERPをほぼカスタマイズなしで導入できる可能性が高いのです。
――一方、成熟企業はどうでしょうか。
廣原氏: 成熟企業、つまり歴史ある大企業に関しては、ほぼカスタマイズが前提になります。商習慣や労働慣行の問題があって、ERPの標準プロセスに合わせるのが難しい。すでに構築されている基幹システムについては極力手を加えず、その周辺領域においてクラウドERPの中の一部プロダクトを適用していく、という戦略がベストだと思います。
――つまり、日本企業のERP導入には、一律の方法論はないと。
廣原氏: そういうことです。企業の特性に合わせて、ERPの導入・活用方法を提案していくことが重要です。特に成長企業に関しては、グローバルスタンダードに近い形でのERP導入が可能だと考えています。日本でもそういう企業が増えてきている。そこに、日本のERPの未来があるのかもしれません。
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