――最近話題になった江崎グリコの「プッチンプリン問題」は、大企業のERP導入の失敗事例といえるのではないでしょうか。あの問題の原因は何だったのでしょう。
廣原氏: いろいろな意味で、日本企業のERP導入の問題点を象徴する出来事だったと思います。実際の原因は分かりませんが、やはりカスタマイズの弊害が大きかったと思います。日本の大手企業は、グローバル標準のERPを日本の商習慣に合わせるためにERPを大きくカスタマイズして導入することが多いです。
今回の場合、かなり長期間利用したERPソフトウェア本体をバージョンアップすることに伴い、過去のカスタマイズとの整合性を取りながら開発、導入しなければならず、とても難易度が高かったのではないかと思います。
――企業各社は前バージョンのSAPを20年近く使い続けてきましたが、ついにサポートが終了し、2027年までに最新バージョンへの移行を迫られた。その移行の際に、以前行ったカスタマイズを今回も同じように行おうとしたわけですが、それには大変な作業が発生しますね。
廣原氏: そうなんです。前回カスタマイズをしたのがかなり昔だった場合、当時のカスタマイズ内容を熟知しているエンジニアはほとんど残っていないでしょうし、新しいバージョンのソフトウェアに合わせて、前回と同じ動作をするようにシステム構築するのは相当難易度が高かったと思います。
しかし日本企業のバックオフィスの現状は、文化や商習慣の違いからERPをカスタマイズせざるを得ない事情があり、標準機能だけでは業務が回らない。どれだけ細心の注意を払っても移行の際にシステム障害が発生してしまうというリスクが発生します。
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