Opsグループが発足したのは、2023年8月。リーダーの木村吏さんが、グループ企業での勤務を経て同社に戻ったタイミングだった。
「このグループが立ち上がるまでのインサイドセールス部は、営業活動をしながらその時々に生まれる課題を各自の判断でシューティングするような、いわゆる“個人商店”が集まったようなチームでした。
メンバーによってオペレーションが異なるため、同じチーム内でも架電数の多い人もいれば、少ない人もいる。トラブルシューティングのやり方も異なり、営業以外にかける時間も人によって大きく違う。そんな状況を解消して、営業にかける時間を増やそうという目的で立ち上がったのがOpsグループです。
Opsグループがセールス活動以外のほとんどを巻き取るようになってからまだ10カ月程度ですが、立ち上げ前よりも1.5〜2倍ほど案件創出数が増えています。何より注目したいのは、インサイドセールスのメンバーに負荷をかけずに、ピュアなセールスタイムを創出できている点ですね」(木村氏)
なぜ、マネーフォワードのOpsグループは短期間でここまでの成果を出せたのか。組織立ち上げからの数カ月を振り返ってもらった。
「まずは、インサイドセールス部を“健康診断”して、課題を可視化できる状態にしました。次に、見えてきたボトルネックを一つ一つ潰していくため、マーケティングやフィールドセールスと協力して課題を解決していきました。現在は、AIによる業務改善を試みています」(木村氏)
インサイドセールス部の健康診断とは、どういうことなのか。「一人一人の営業活動を可視化する、モニタリング環境を作った」のだという。このシステムは、木村さんがSQLなどの知識を駆使してExcelで自作したものだ。「入社してからずっと営業畑」という木村氏がこの仕組みを作ったのには、営業に対する“ある思い”があるのだと言う。
「僕はもともと、お客さんとお話するのが得意ではありませんでした。そんな僕が営業として持続可能な成果をあげるにはどうしたらいいか。営業を始めたばかりの頃は、毎日のように試行錯誤していましたね。
たどり着いたのが、データを活用して自分の得意分野や課題を可視化する方法だったんです。自分自身の営業がしやすくなっただけではなく、人に教えるのもスムーズになりました。そこから、より効率的にデータを収集・可視化するために、ExcelやGoogle スプレッドシートはもちろん、AIにも積極的に触れるようになりましたね」(木村氏)
Opsグループにはセールスイネーブルメントや営業企画の経験者が集まっており「ビジネスやデータ、オペレーションに強みを持った人たちの集合体」(木村氏)としての推進力も強みとなった。これまで個人商店として、各々の裁量で回していたオペレーションを可視化したことで、インサイドセールスのメンバーそれぞれの営業活動の特徴が浮かび上がってきた。
「他のメンバーと比べで架電数が少なかったり、架電数は平均的にもかかわらず会話時間が短かったり、フィールドセールスへつなげられる件数が少なかったり。一人一人の課題を可視化することでマネジャーはフィードバックがしやすくなりましたし、メンバーもどこをどう改善したら目標達成できるかが分かりやすくなって、モチベーションの向上にもつながっています」(松原氏)
インサイドセールスは、オンラインでの活動がメイン。顧客と対面でやりとりすることは少なく、アポが取れたらフィールドセールスにつなげるのが一般的だ。そのため「モチベーションを保ちづらい」ことが課題になっている組織は少なくない。そんな中、マネーフォワードはデータをどのように活用して、メンバーのモチベーションを上げているのだろうか。
「例えば、平均よりも案件創出数が高いメンバーには、そのナレッジをチーム全体にシェアしてもらっています。また、データはメンバーも見れるので、確認して課題を洗い出している人も多いようです。どこを強化すればいいかが一目で分かるし、そこをサポートするためのナレッジシェアも随時開催されている。だから、成果につながりやすいのだと思います」(松原氏)
「他にも、フィールドセールスにつなげた案件が、どのくらいの売り上げになったか。どういう業種、事業規模のお客さまの、どんな課題解決につながったか。インサイドセールスでどんな情報を引き出せたから、次につながったのか。アポイント獲得のその先までフィードバックするようにしています」(木村氏)
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