ビットコインは、その価格変動の大きさから高リスク・高リターンの投資先とされている。メタプラネットの株価を見れば、その影響は一目瞭然だ。実際、同社の株価はビットコインの価格変動に強く依存しており、ビットコインの価格が上昇すれば株価も上昇するが、逆に価格が下落すれば株価も急落するリスクを抱えている。
金融庁が暗号資産ETFを認めていない理由は、暗号資産市場がまだ未成熟であり、価格の変動が激しく、投資家保護が十分に確保できないとの判断に基づいている。特に、詐欺や資金洗浄のリスクが高いことが、扱いを慎重にしている理由の一つだ。
しかしメタプラネットの戦略は、この規制を迂回する形で、ビットコインを大量に購入し、事実上のビットコインETFとして機能させるものと考えられる。。これにより、投資家は直接ETFに投資することなく、間接的にビットコインに投資することが可能となる。
メタプラネットの戦略が抱えるリスクを理解するためには、DMMの暗号資産流出事件を振り返る必要があるだろう。この事件では、DMMが保有する大量のビットコインが流出し、多くの投資家がその影響を受けた。これは、暗号資産が持つセキュリティリスクを如実に示しており、メタプラネットが保有するビットコインにも同様のリスクが存在することを示唆している。
ビットコインのような暗号資産は、価格の変動だけでなく、技術的な脆弱性やセキュリティの問題も抱えている。これらのリスクは、投資家が十分に認識し、適切に管理することが求められるが、メタプラネットの戦略では、これらのリスクが投資家に十分に伝わっていない可能性がある。
東京証券取引所には、上場企業が一定の基準を満たさない場合に上場廃止となる規定が存在する。特に、企業が市場価値を持続的に高めるための努力を怠った場合や、実質的な事業活動が行われていないと判断された場合、上場廃止のリスクが高まる。
上場企業が特定の資産、つまりビットコインの「入れ物」として機能している場合、市場の透明性や投資家保護の観点から、東証が上場廃止を検討する可能性は否定できない。このような企業が市場に存在することで、投資家に過剰なリスクを負わせることになり、最終的には市場全体の信頼性が損なわれる懸念があるからだ。
現在、暗号資産の税制は雑所得に分類されており、所得が大きければ利益に対して最大55%程度の税率がかかる。SNSではこのことをもって「新NISAの成長投資枠でメタプラネットを買えば、ビットコイン投資が無税となる」という触れ込みも散見される。
実際に、ビットコインが大きく値上がりした日には、新NISAの売買ランキングでも同社の名前を見かけるようになってきた。新NISAで投資デビューした層が、高い値上がり率ランキングにつられてメタプラネット株をビットコインの代替資産と見なしている様子がうかがえる。
しかし、同社の実績PBRが88倍ということは、メタプラネット株式を1ビットコイン分買ったとしても、解散時に得られるビットコインは約0.0113ビットコイン程度しかないことを意味する。所得税を支払って通常の暗号資産口座で現物のビットコインを買う方が安上がりになるだろう。また、本業が赤字のメタプラネットでビットコインの流出事件が起きれば、DMMのような本業が安定している会社と異なり、十分な補償を受けることは絶望的だろう。
もし今後もこうした戦略が野放しにされていけば、例えば本業を小規模に継続しながらバランスシートの大部分を「暗号資産」「原油」「純金」のみにするといった上場企業や、他の有望企業の株式を単にホールドしているだけの上場企業が出てくることも考えられる。金融庁や東証といった当局の動向が注目される。
1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Xはこちら
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