なぜここまでイケイケで出店できるのかというと「小さな店」だからだ。一般的なスーパーならば、レジ打ち、品出し、生鮮食品売り場の担当者、さらには駐車場の誘導員や警備員などそれなりにスタッフがいるが、「まいばすけっと」の場合は店の広さにもよるがコンビニと同じく2〜3人で済む。
コンビニと人件費はそれほど変わらないけれど、スーパーなのでコンビニよりも品ぞろえはあるし、日々の食材などが買えるので便利。しかも至る所にあるとなればロイヤリティが高まるのは当然だ。
もちろん、これはスーパーという「毎日買い物をする店」だから成立するドミナント戦略である。しかし、消費者不足に苦しめられているコンビニや外食チェーン、ファストフードなどからすれば、「ウチもまねできないか」と考えるのは自然の流れだ。
そんな「小型店によるドミナント戦略」を進める中で思わぬ「発明」もなされる可能性もある。
例えば、街角に昭和のタバコ屋のような超極小セブンができるかもしれない。駅のホームには超小型マックができて、道路には丸亀製麺の小型キッチンカーが走る。そんな「小さな店」があふれる日本がそう遠くない未来にやってくるかもしれない。
日本ではあまり話題にならないが、世界では人口減少する中でどうやって持続的に経済成長をしていくのかという「シュリンコノミクス」(シュリンクとエコノミクスを合わせた造語)という考えが注目されている。
欧州も中国もほどなく急速に人口減少することが分かっている。アフリカでも国によって都市部では少子化が報告されており、このような人類共通の問題を解決するため、「課題先進国」である日本の取り組みに熱い視線が注がれているのだ。そんな中で浮上した「店舗の小型化」という「21世紀のスモール・イズ・ビューティフル」ともいうべき施策が、シュリンコノミクスを探る一つのヒントになっていくのか。
ただ一つ、個人的に心配するのは、もっと小さく、もっとコンパクトに、という商売を突き詰めていくうちに、「人間の器」まで小さくなってしまうことだ。あらゆるものがシュリンクしていく「縮むニッポン」の中で、せめて心の中くらいは大らかでいたいものだ。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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