日本でCX施策の優先度が伸び悩んだ背景には、3つの要因があると太田さん。
1つ目に、多くの日本企業がバックオフィス業務などのDXを優先して取り組んでいることがある。
電子帳簿保存法改正やインボイス制度への対応の影響もあり、バックオフィス業務のDXに対し、多くの企業が切迫感を持って取り組んだ。必然的に、CX施策への投資の優先度は低くなったというわけだ。
2つ目に、CX関連施策は「数値化しにくい」ことがある。
システム導入によって「〇割工数を削減」「作業時間を〇時間削減」などと、数値化して効果を出しやすいと、IT投資は進めやすいものだ。CX施策は顧客満足度向上に寄与するものの、具体的な施策がどれだけの効果を生み出したのか数値化するのが難しいため、投資の優先度が下がりやすいという。
「バックオフィスのDXなどは、業務効率化や生産性向上、現場の改善の成果が見えやすいのが特徴です。一方CX施策は、社内のデータ基盤が整備されていない状態では効果を示しにくい部分もあり、評価を受けにくかった側面があるのかもしれません」
3つ目に、多くの企業でCX施策が限られた部署で推進されてきたことがある。
コロナ禍でリアルの接点が制限されたことで、デジタル上の顧客接点強化が急務になった。そのため企業は、ECサイトの改善、コンタクトセンターでのデータ活用……など、まずは特定の部署ごとに、最適なソリューションの導入を進めた。
「各顧客接点のデジタル化をスピーディーに進めるためには、特定の部署に閉じて進めざるを得ない状況がありました。そのため、『CXは、コンタクトセンターやマーケティング組織にしか関係がないものでしょ?』という認識が生まれてしまったのかもしれません」
しかし本来は、CX向上はマーケティングやコンタクトセンターに限らず、部署横断で、全社的に取り組むべきテーマである。顧客データ基盤を整え、各接点で顧客体験を最適化させるためには、複数の部署で連携していく必要がある。太田さんは「部署横断でCX施策を講じるには、まだ組織体制が不十分な企業も多い」と話す。
その他、海外企業では人材の流動性が高く、顧客データなどを管理していないと引き継ぎが難しく、多様な人材を配置しにくくなることなども影響しているという。
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