米アメックス、若者リッチ層のカード利用が過去最多 「特典施策」が奏功?

» 2024年09月01日 09時00分 公開
[Patrick CooleyPayments Dive]
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 米クレジットカード会社アメリカン・エキスプレスは、プレミアムカードに登録し、他の顧客よりも多くのお金を使うZ世代やミレニアル世代のカード保有者にますます依存している。

 近年、アメリカン・エキスプレスは、ストリーミング・サービスのクレジットなど、若いカード会員にアピールする特典を導入している。先週発表した同社の第2四半期決算報告に対しアナリストは、こうした努力が実を結び、経済が不透明な中でも同社の業績を後押ししているようだと述べた。

アメックス、「若者層」のカード利用が過去最多 なぜ?

 ミレニアル世代とZ世代は、この四半期に約544億5000万ドルをアメックス・カードに支払った。アメリカン・エキスプレスのスティーブ・スクエリCEOは決算説明会で「この金額はこの世代の四半期合計としては過去最高であった」と述べた。同社の四半期決算報告書によると、この数字は2024年1〜3月期の約489億6000万ドル、2023年第2四半期の480億5000万ドルから増加した。

 Z世代は12〜27歳、ミレニアル世代は28〜43歳である。

(ゲッティイメージズ)

 これらの若いカード会員による支出は、アメックスカードの総支出の33%に達した。スクエリ氏は「このセグメントからの請求としては過去最高」と述べた。

 また、プレミアム・カード会員も増加。同社の四半期決算報告書によると、第2四半期に獲得した新規口座330万件のうち、77%がプレミアム・カードであり、2023年同時期の70%から増加した。

 過去数年間、アメリカン・エキスプレスはプレミアム・カード会員に、ストリーミング・サービスなどのデジタル・エンターテインメントに240ドル相当の特典や、UberEatsの無料パスなどの特典を提供してきた。

 金融情報大手の米モーニングスターのアナリスト、マイケル・ミラー氏はインタビューで「若い顧客を引き付けるマーケティング費用だけでなく、特典の構成方法も重要だ」と語った。アメックスは「かつては旅行カードだったが、今ではストリーミング特典やUber、UberEatsに関連した特典を見かけるようになった。より幅広い消費者にアピールしている」と語った。

 米投資銀行ウィリアム・ブレアのアナリストは投資家向けメモの中で、若年層の消費増加とプレミアムカード会員の増加は、長期的にアメリカン・エキスプレスに利益をもたらすとしている。

 アナリストは、ミレニアル世代とZ世代は「最初の10年間で生涯価値が2倍、利用額の伸びも2倍になる」と述べた。「今は比較的出費の少ない若い顧客も、やがて節目を迎えるにつれて出費が増え始める」と米銀大手バンク・オブ・アメリカのアナリストは指摘する。

 「ほとんどの人は典型的なライフサイクルを送る。30、40代になると、キャリアを重ねるにつれて20代の頃より収入が増えるだろう。彼らはライフイベントを経験し、結婚して子どもが生まれ、支出が増える」

 ウィリアム・ブレアのアナリストらは、プレミアム・カード会員の増加は、消費者支出の鈍化に対する緩衝材になるはずだと述べた。

 「アメリカン・エキスプレスの高級な消費者層の増加は、厳しいマクロ環境を緩和する可能性がある」と、アナリストらは投資家向けメモに記した。

 スクエリ氏も決算説明会で同様の発言をしている。「当社の継続的な好業績はプレミアム顧客から生まれている。彼らは支出額が高く、長期にわたって利用しており、信用度も高い」

 同社は2024年にマーケティング費用を増やす予定であり、年間60億ドルのマーケティング予算を8億ドル増やして68億ドルにする計画だと、スクエリ氏は投資家たちに語った。

 同社は、プレミアムな体験を提供することで、引き続きプレミアムカード保有者に重点を置く兆候がある。

 先月はレストラン予約プラットフォームの「Tock(トック)」を4億ドルで買収した。トックはホテル予約システムやイベント管理ツールも提供している。

 トックは、シカゴの「Alinea」のような、メニューに価格を表示しない高級レストランと提携している。この買収により、アメックスは高額消費者のカード会員に、より多くの贅沢(ぜいたく)な体験を提供できるようになるだろう。

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