「自分の考え方は偏っていて教育者的ではない」と語る今木社長。教育事業を展開する上で大切にしていることが一つあるという。
「それは、子どもを大人扱いすることです。例えば、タブレットはブルーライトを抑制したディスプレイを搭載し、長時間の凝視を想定したものを採用しています。RISU算数の画面でも、子どもじみたキャラクターなどは登場しません。他社製品だと、勉強のご褒美にゲームを遊べる機構を採用している商品もありますが、当社はそういう仕組みは取り入れていません」
RISU算数でも、確かにご褒美的な要素はあるものの、それは解読するための暗号問題や、中学受験に出るような応用問題を出題する形だ。とことん算数への知的欲求を刺激する構成にした。問題を解くと「がんばりポイント」というポイントが貯まることによって、子どもがプレゼントと交換できる制度も設けている。その景品もiPhoneや双眼鏡といった実用的なものばかりだ 。
この「子どもを子ども扱いしない」UIは、RISU Japanの他製品にも表れている。同社では「RISU AIペン」と称し、子どもの姿勢改善シャープペンシルを販売。これまで同種の製品では「姿勢矯正ベルト」といった商品が存在するものの、これはあくまで子どもに強制させるアプローチだと言える。
その点RISU AIペンでは、360度近接センサーをペンの末端に内蔵することによって対処した。このセンサーによって、子どもの目と、ペンの距離とを測定。姿勢が悪化するとペンの先端部が物理的に引っ込んでしまう仕組みだ。この機構が目を引き、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」内のコーナー「トレンドたまご」で「2023トレたま年間大賞」を受賞した。他のメディアでも取り上げられ、ヒット商品になっている。
多様性が叫ばれ、顔が見えない者同士のコミュニケーションが当たり前なインターネット主体の時代では、相手の属性や年齢を分析するだけは効果的なマーケティングができなくなってきた。同社の「子どもを子ども扱いしない」UI設計は、消費者のインセンティブをよく理解していて合理的だ。商品開発のヒントにすべき事例といえる。
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