必要最低限の仕事はキッチリしているのに、「必要最低限の仕事しかしていない」と非難されるとしたら変な話です。一方で、必要最低限の仕事さえしていないとなると話は違ってきます。給料は労働の対価ですから、給料に見合う労働を提供していなければ契約不履行です。
しかしながら、中には必要最低限の仕事を「している」「していない」の認識について職場側と働き手側とでズレが生じていることがあります。そのズレによって静かな退職に対する受け止め方は変わってきますし、職場と働き手の間で生じるトラブルの原因にもなり得ます。
認識のズレが生じるメカニズムを確認するために、必要最低限の仕事をしているか否かの職場側の認識を縦軸、働き手側の認識を横軸にとって整理してみると、静かな退職をめぐる状態は大きく以下の4タイプに分類されます。
職場側も働き手側も必要最低限の仕事をしていると認識しているのは「円満タイプ」。この場合は双方の認識が一致しているので基本的に問題は生じません。一方、職場の方は最低限の仕事をしていると認識しているものの、働き手側はしていないと認識しているのが「ゆとりタイプ」。この場合、職場側には特段不満は生じないものの、働き手側には余力があるだけに罪悪感を持ったり、仕事が物足りずに「こんなんでいいのかな」と不完全燃焼になったりしがちです。
それに対し、職場側は最低限の仕事さえしていないと認識しているのに働き手側はしていると認識しているのは「疑似サボりタイプ」。職場側からするとサボっていると見えるので不満ですし、働き手は自分なりにきちんと仕事はしていると思っているので職場が認めてくれないことに不満を覚えます。
職場側も働き手側も、必要最低限の仕事をしていないと認識しているのは「真正サボりタイプ」。双方にとって望ましいとは言えない状況のはずですが、もしも働き手側が開き直って居座っているとしたら「してやったり」かもしれません。一方、職場としては戦力にならないのでマイナスでしかなく、労働に見合わない対価を受けとっていればまさしく給料ドロボーです。
以上のように4分類すると円満タイプを除いて望ましい状態とはいえず、何らかの改善が必要です。
ゆとりタイプの場合は、全出力でなくともそこそこ仕事ができてしまうほど能力が高い働き手が疲れてしまっていたり、スランプに陥っていたりするような状況かもしれません。それならば、無理はせず自分のペースで働き続けながら時間をおくことで徐々に回復していくことがあります。
しかし、働き手の興味関心が他に移ってしまい、仕事に物足りなさを感じているような状況であれば異動を申し出るか、社内に望ましい仕事が見当たらなければ転職して仕事を替えないとストレスが蓄積していくことになります。職場にとっては戦力になる存在ではあるものの、何も手を打たないままでいると離れていく可能性のある人材です。
疑似サボりタイプの場合は、まず職場側が求める仕事内容を明確に伝えて働き手と目線を合わせる必要があります。「言わなくても分かっているはず」などと曖昧(あいまい)にしておくと、働き手との認識のズレは日に日に大きくなっていきます。目線合わせがうまくいかない場合は、異動や転職などで職場を替えないと、職場側も働き手側も不幸です。
真正サボりタイプは、互いに不幸な状態であることがはっきりしています。求められている仕事をしないのですから、職場側としては解雇も含めた厳しい対処を考えざるを得ません。長く在籍すればするほど働き手のモラルが崩れ、モラルハザードや負のオーラが同僚たちにも波及して、職場全体に深刻な悪影響を及ぼすこともあり得ます。
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