仕事は必要最低限 「静かな退職」に職場はどう向き合えばいいのか?働き方の見取り図(3/3 ページ)

» 2024年09月11日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]
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「最適な働き方」 解はどこに?

 ここまで見てきたように、静かな退職は円満タイプを除き、職場側にとっても働き手側にとってもさまざまなマイナスがあります。一方で、職場の中に静かな退職をしている人がいることで、明らかに得する働き手がいます。仕事に対するモチベーションが高い人です。

 仕事のモチベーションが高い人が静かな退職をしている人と一緒にいると、日々のちょっとしたやりとりだけでも目立つ存在になります。能力では後塵を拝したりミスが多めだったりしても、「すみません、頑張ります!」「もう一度やらせてください!」などと、モチベーション高くイキイキと仕事をしている人は、周囲から好感を持たれやすくなります。

 「じゃあ、こんな仕事があるけどやってみるか?」と新たなチャンスを獲得し、成長機会を広げていきます。一方、静かな退職をしている人はそんなチャンスに遭遇しにくく、遭遇したとしても断ってしまうため、仕事を通しての成長が止まってしまいがちです。

 静かな退職を5年、10年と長く続けていくほど、チャンスを獲得し続けた人との成長機会の差は開いていきます。円満タイプの静かな退職であれば問題なさそうですが、その場合も後輩に先を越されるといったことが起り得ることは認識しておく必要があります。

 一方、静かな退職とは異なるものの、家事や育児など家庭の制約によって、必要最低限以上の仕事をするのが難しいケースもあるでしょう。また、男性育休取得者が急上昇していることに象徴されるように、それは女性だけの課題ではなくなってきています。

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 さらには副業も推進される傾向にある中、仕事と何かとの両立に取り組むことが、誰にとっても当たり前の時代となりつつあります。

 以前書いた記事「週3日や時短勤務に「後ろめたさ」を感じる理由 柔軟な働き方を実現するヒントとは?」の中でも指摘したように、時代は誰もが最適な働き方を選択する「ワークスタイル4.0」へと向かっています。しかし、どんな働き方が最適なのかに決められた正解などありません。

 それは人によって異なりますし、置かれた環境やライフイベントによっても変わってくるものだからです。また、さまざまな経験をしてたどり着くものでもあります。

 そう考えると、働き手にとって静かな退職には、最適な働き方を探す時間を確保したり、心身の状態を整えて自分自身を冷静に見つめるために必要な、クールダウン期間という意味もあるのではないでしょうか。あるいは、文字通り退職するのであれば、新たな職場に移って仕切り直すための助走期間と位置付けられるものなのかもしれません。

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