リバースメンター制度は同社に、どのような効果をもたらしたのだろうか。大里氏は「リバースメンタリングの本来の目的である『コミュニケーション促進』と『DE&Iの推進』の、どちらも達成できているという手応えを感じています」と話す。
実施後のアンケートの結果を見ても、8割が「目的を達成した(自由闊達な意見交換・新しい気付きを得られた)」、ほぼ全員が「ほかの人にも勧めたい」と回答しており、メンター経験者からの評価は高い。「経営層の考えを聞ける機会でとてもためになった」といった声も上がっており、上下間のコミュニケーションは着実に活発化しているようだ。「役員層にとっても、通常は自分の所管の若手社員としか話をする機会がないので、別の観点から新しい考えを聞く、よい機会になっているようです」(大里氏)
また、注目したいのが「別の部署や職種の仕事を知るきっかけにもなった」という声が見られる点だ。金属事業の部門に所属していた際に、実際にメンターを務めていたという長谷川氏は、「相方のメンターは加工事業の部門、メンティーの役員は環境リサイクルの部門に所属していました。私の提案でメンティーの所管している工場に行き、回収した家電をリサイクルする現場を見学したこともあります。知っている社内事業の幅を広げることができ、勉強になりました」と当時を振り返る。事業が多岐にわたる大企業としての性質上、社員にとって異なる部門はどうしても遠い存在になってしまう……そんな課題の改善にも貢献しているようだ。
同社はリバースメンター制度の他にも、2021年度からインナーブランディング(組織内にビジョン・ミッションを浸透させる活動)の一環として、社長がパーソナリティーを務める「社内ラジオ」や、普段関わりのない部署の仕事を社員が体験する「半日職場体験」といった、風通しの良い組織風土を醸成するためのコミュニケーション施策に取り組む。大里氏は、「制度を開始した当初は、役員は『雲の上の存在』という感覚も強かった」としつつも、一連の施策を通して「フラットな組織が着実にできてきている感覚がある」と手応えを話す。
同社は今後、リバースメンター制度をどのように推進していくのか。大里氏は「アピールシートは大きな変化でしたが、これからもっといろいろなニーズに合わせて、形式を変えたりと工夫していければ」と話す。2024年度には大きな変更点として、導入時は役員層に限ってきたメンティーを、希望制で本部長クラスにまで拡大した。現在は対象となる16人のうち、5人がメンティーとして参加しているという。
「事務局から若手に声をかけることも多いのですが、より積極的に従業員が手を挙げて参加してもらえるように、どんな工夫ができるか考えていきたい。送り出す側の上司も『貴重な機会だから、(仕事のことは)気にせず行ってきなよ』と言える関係性を作れるとベストだと思います」(長谷川氏)
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