プロ野球で、完全試合を達成したロッテの佐々木朗希選手の人材育成法が話題になっている。佐々木選手は2019年にドラフト1位で入団。しかし1年目は1軍の試合には出ず、体づくりに専念。2年目もフル出場しないで経験を積ませるなど育成計画に基づいてじっくりと育成し、3年目で快挙を成し遂げた。
「企業もこうした“じっくり育成法”を学ぶべきだ」という声も多い。だが、よくよく考えて見ると、1〜2年目は人材投資による育成期間と位置付け、3年目に独り立ちして投資の回収を図るというのは、一般的な日本企業の考え方だったはずだ。そしてその育成の根幹は、先輩の指導役が付き添って技能の向上を支援するOJT(職場内訓練)だった。
しかし現在、日本企業の“お家芸”だったOJTが風前の灯火(ともしび)の状態にある。日本生産性本部の「第9回働く人の意識に関する調査」(22年4月22日)によると、最近3カ月(1月以降)の間にOJTを受ける機会があったかの質問で「あった」はわずかに17.4%、「なかった」が82.6%。
OJTを行った機会の有無でも「あった」が16.8%、「なかった」83.2%であり、OJTの実施率が低いのが実態だ。しかもこの傾向は新型コロナウイルスの感染状況の影響があまりなく、21年4月の調査でも、OJTを行う機会があったと回答した人は14.9%であり、以降の調査で一度も20%を超えていない。
同調査レポートでは、次のように警鐘を鳴らしている。
「わが国の企業内教育は、伝統的に欧米企業に比べてOff-JTよりOJTの占める割合が大きいと言われている。(中略)OJTを行う、受ける機会とも前回調査から回復したが、実施率は2割に届かず、日常的にOJTが行われている様子はない。低調なOff-JTと併せて、企業の人材育成力が低下している状態に変わりはなく、『人への投資』が喫緊の課題であることを示している」
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