日米韓で異なる「IPビジネス」の稼ぎ方 軒並み好調のエンタメ企業を分析(1/2 ページ)

» 2024年10月07日 08時00分 公開

 2024年は、アニメ・漫画・キャラクターなどを主軸にした日本のエンタメ企業が順調に事業を成長させた年でした。エンタメビジネスが好調なのは日本だけなのか、それとも世界的な傾向なのか。そして、主要エンタメ企業が共通して注力するIPビジネスとは何なのか?

 コンテンツIPビジネスを国内外で手掛けるMinto(東京都港区)代表取締役の水野和寛が解説します。

国内エンタメ企業が軒並み好調な背景は? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

水野 和寛(みずのかづひろ)/ Kazuhiro Mizuno

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株式会社Minto代表取締役。

一般社団法人ライセンシングインターナショナルジャパン理事。

前職で国内最大級のデコメやゲーム等の事業を牽引後、株式会社クオン設立。キャラクター・スタンプで世界60億超DL。2021年にSNS漫画で国内最大級のwwwaapと経営統合し、株式会社Mintoに。 統合後新たに立ち上げたWeb3、Webtoon、メタバース領域の事業も成長中。


国内エンタメ企業は軒並み好決算 なぜ?

 まずは、日本の主要エンタメ企業の状況を確認してみましょう。2024年は各社好決算で着地しているのが分かります。

(1)バンダイナムコホールディングス(2024年3月決算)

 売上高:1兆502億円 営業利益:906億円

 バンダイナムコは、グループとして初の売上高1兆円を突破しています。「ガンダム」「DRAGON BALL」「ONE PIECE」などの人気IPを取り扱い、おもちゃ、ゲーム、テーマーパーク、興行などさまざまなエンタメビジネスを手がける同社の好決算は、日本のエンタメビジネスの好調さを物語っているといえます。

(2)東映アニメーション(2024年3月決算)

 売上高:886億円 営業利益:233億円

 東映アニメーションも、売上高は過去最高、営業利益は過去2番目の数字に。2023年度に「SLAM DUNK」や「ONPIECE」の映画が大ヒットしたため、今年度は、その揺り戻しがあるかと予測されていましたが、引き続き2024年度も好調に推移しました。

(3)サンリオ(2024年3月決算)

 売上高:999億円 営業利益:269億円

 ハローキティなど多くの人気キャラクターを保有するサンリオは、売上高(前年比37.7%増)、営業利益(前年比103.5%増)と共に大きく伸ばし、営業利益は過去最高になっています(2025年3月期も過去最高益更新見込み)。株価、時価総額の面でも中期計画で掲げていた時価総額1兆円を2024年9月に突破。投資家からも注目を集めていることが分かります。

 各社の事業が好調な背景にはさまざまな理由がありますが、共通していえるのは、以下の3点です。

  • コロナ禍からの消費復活
  • 推し活トレンド
  • 海外での日本アニメ・漫画・キャラクター人気

 コロナ禍のステイホーム時には、漫画やアニメなど自宅で楽しめるエンタメに多くの人が時間を費やしました。この1〜2年はコロナ禍の反動的に映画、イベント、グッズ購入の消費が戻ってきています。また、推し活トレンドがアイドルだけでなく、一般のアニメキャラクターにも派生していて、グッズの購入が再び増えてきています。

 コロナ禍のステイホーム時にアニメを楽しんでいたのは、日本だけでなく世界中で同じ状況でした。NetflixやAmazon Prime、Diseny+、Crunchy Rollなどの映像配信プラットフォームはコロナ禍でユーザー数を増やし、これらの映像配信プラットフォームでは、日本の新旧アニメ作品が大量に視聴され、多くのファンが生まれました。

 海外での日本アニメ・漫画・キャラクターのグッズなどの販売の好調さは、各社の決算を見ても明らかです。東映アニメーションの2024年度の決算資料では、国内版権使用料160億円に対して、海外版権使用料は260億円と大きく上回っています。また、サンリオの決算資料でもコロナ前の2018年度の海外の貢献利益約80億円に対して、2024年度は360億円まで伸びていると示しており、こちらも大きなインパクトになっています。

 海外での日本のアニメ・漫画・キャラクター人気が、各社の好業績に寄与している点では、インバウンド観光客の増加もあります。円安効果もあり、コロナ明けから多くの海外観光客が再び日本を訪れています。サンリオピューロランドやアニメイトなど、体験型施設やグッズ購入が旅程に組み込まれているのも好影響のポイントだと考えられます。

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