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エーザイ、富士通、丸井――人的資本開示の成功企業、「独自指標」は何を設定?「人事データ開示」の極意(3/3 ページ)

» 2024年10月15日 07時00分 公開
[花岡健太ITmedia]
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三井物産:「比較可能性」と「独自性」を追求

 「人の三井」と評される三井物産は、「すべては人からはじまる」という言葉を原点とした人材戦略を展開している。自己定義をベンチャー企業と置き、英文社名であるMitsui & Co. の「& Co.」に「仲間たち」という意味を込めている。多様な仲間が「挑戦と創造」の精神のもと、自由闊達な組織風土で働くことで、一人一人が成長し適材適所で活躍する、日本を代表する企業である。

 同社の人的資本レポートは、まず「『未来をつくる』人をつくる」というタイトルが付されている点が目を引く。コンテンツで特徴的なのは、「個人」にフィーチャーしながら人的資本経営の一つひとつの指標を開示していることだ。「人」にこだわり、「強い個」の育成に力を入れ、多様性を「インクルージョン」している同社の姿勢を表しているといえるだろう。

 例えば「キャリアチャレンジ制度」の紹介では、制度の概要や参加者の平均年齢を示すだけでなく、実際の参加者の声を紹介している。定量指標を開示するだけでなく、定性情報によって実態を示している点は参考となるポイントだ。

photo 三井物産「『未来をつくる』人をつくる 人的資本レポート2023」p.29より引用(参考リンク:PDF

 だからと言って、「個人」に寄りすぎているわけではなく、全社の戦略や経営課題と各施策をひも付けて整理している。どのような人的資本投資をおこなうことで(インプット)、どのような目標指標に影響し(アウトプット)、どのような経営課題を解決できるのか(アウトカム)というところまで体系立てて整理しているのは模範的だ。

photo 三井物産「『未来をつくる』人をつくる 人的資本レポート2023」p.43より引用(参考リンク:PDF

 加えて、同社はISO30414で規定されている各指標も開示している。まさに「比較可能性」と「独自性」の両方を追求した開示事例だといえるだろう。

photo 三井物産「『未来をつくる』人をつくる 人的資本レポート2023」p.65より引用(参考リンク:PDF

おわりに

 今回紹介した4社は人的資本開示のロールモデルともいえる事例である。こうした事例を参考にしながら、自社の場合、企業価値向上のためにどのような人事データを収集・活用していくべきかを議論することが重要だ。自社の課題や価値観を踏まえ、ぜひ独自性のある人的資本経営を推進していただきたい。

著者プロフィール

花岡 健太 株式会社リンクアンドモチベーション コンサルタント・モチベーションエンジニアリング研究所 研究員

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東京大学農学部卒業後、大手損害保険会社を経て中途入社。従業員エンゲージメント向上サービス「モチベーションクラウド」やコンサルティングを通じて、100社超の組織変革を支援。現在は、研究員としてデータ分析・活用も担う。


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