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ホリエモンが語る「生成AIの本質」 宇宙ビジネスが切り開くデータ社会の未来とは?(1/2 ページ)

» 2024年10月22日 08時00分 公開
[佐藤匡倫ITmedia]

 データ社会がビジネス界をどのように変え、新たな課題や機会をもたらすのか――。

 9月12日、札幌市で開催された「NoMaps2024」で、ホリエモンこと堀江貴文氏と、PCの世界シェア首位を誇るLenovo(レノボ)を傘下に持つ投資会社「レジェンドホールディングス」副総裁の于浩氏がこのテーマで対談した。

 同イベントは北海道を舞台に産官学連携で新しい価値の創出を目的としたコンベンションを開催している「NoMaps」主催で、毎年さまざまなセッションを展開している。カンファレンスの冒頭を飾った「天下秀Presents データ社会を私たちはどう生きるか」では、データ社会が生活に与える多面的な影響や、そこから生まれる課題と機会について意見が交換された。

9月12日、札幌市で開催された「NoMaps2024」。堀江貴文氏(左)とレジェンドホールディングス副総裁兼イノベーション発展センターMDの于浩氏(以下、撮影:佐藤匡倫)

 堀江氏は、生成AIが人間の能力を拡張するツールとして大きな役割を果たすことを強調。AIの進化が単なる知覚機能の枠を超えて、論理的思考を再現するレベルに達していることを指摘した。また、宇宙とあらゆるデータの双方向性について、米国の航空宇宙メーカー・スペースXが手掛ける通信衛星や人工衛星により電磁波を利用して、地球の対象物をリアルタイムで観測できるリモートセンシングの技術活用の可能性について述べた。

 于氏は、AIによって生成されたコンテンツ(AIGC、AI-Generated Content)が増加していることに触れ「新たなデータ世界が形成されている中で、どのように生きていくべきかを再考すべきだ」と主張した。セッションの内容について、お届けする。

堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)実業家。1972年10月29日、福岡県生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。現在はロケット開発や、アプリのプロデュース、また予防医療普及協会として予防医療を啓蒙するなど、さまざまな分野で活動する。会員制オンラインサロン『堀江貴文イノベーション大学校(HIU)』では、700名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開している。著書『金を使うならカラダに使え。』『Chat GPT vs. 未来のない仕事をする人たち』『2035 10年後のニッポン ホリエモンの未来予測大全』など
于浩(ユー・ハオ)1971年中国ハルビン市生まれ。レジェンドホールディングス副総裁兼イノベーション発展センターMD。ハルビン工業大学(深圳)特別教授、東北財経大学MBA非常勤講師、中欧AMP北京クラブ会長などを兼任し、中国、米国、日本で数百件の特許を出願。デジタル分野で数々の論文を発表

ホリエモンが指摘した「生成AIがもたらす変革」とは?

 「生成AIは、頭をよくするためのチートツールだと思っているんですね。人間の大脳の機能をかなりカバーしてくれているんですよ。考えるのが得意じゃない人は、生成AIを活用すれば、めちゃくちゃ賢くなれる。例えば僕は絵が下手なんですよ。よくイラストとかパパパって綺麗に描ける人っているじゃないですか。だけど今ChatGPTにプロンプトを入れれば、 めちゃくちゃ綺麗な絵を描いてくれるんですよ。絵を描けない人間からすると『俺めっちゃ絵うまくなったわ』みたいな。そういう風に考えたらいいのかなと思ったんですよね」(堀江氏)

 さらに堀江氏は生成AIに関する持論をこう話した。

 「ディープラーニングは凄い発明だったと思います。ただディープラーニングは人間の認知機能に特化したものだったので、認知以外の応用はできなかった。だけど、今回の生成AIは、Attention(アテンション)っていうところにものすごく力点を置いていて、認知以外の、より人間のジェネラルな『運動』や『論理的思考』までエミュレーション(模倣)できるようなニューラルネットワークになったので、さまざまな応用がされている。米Googleの研究者などが翻訳や文字起こしの機能を向上させようとして開発したTransformer(トランスフォーマー)といった技術を経て、AIがより人間に近い思考回路を持つAGI(汎用人工知能)に近づいた」

 Transformerは、ChatGPTのベースにもなっているLLM(大規模言語モデル)の根幹を成す技術だ。重要な情報を優先的に処理し、正確な予測や生成を実行できるようにするAttention(アテンション)メカニズムにより、従来のAIと比べ、精度の高い論理的な思考も再現することが可能となった。

 GMOリサーチ&AI(東京都渋谷区)は、生成AIの認知度は7割に達している一方で、業務での利用率は4割未満という調査結果を発表した。生成AIの利用目的は、「業務効率化と文書作成」が最多。他には「専門的な知識の調査と確認」といったように活用幅も広がっているという。

出典:GMOリサーチ&AIの調査結果より
出典:GMOリサーチ&AIの調査結果より

 「僕は毎日コラムを書いているんですね。撮ってきた写真も添付したりするんですけど、適当な写真がない時とかって、例えば以前だったら”いらすとや”のフリーイラストとかで合っているようなものを使ったりしていたのが、今はプロンプトを入れればなんでも描いてくれる」(堀江氏)

 生成AIによる業務効率化という視点で堀江氏は、自身が執筆するコラムやメールマガジン、配信動画における生成AIの活用例を挙げ、ビジネスや日常生活における実用性を強調した。

 一方、于氏は、AIによって生成されたコンテンツ(AIGC)が増加していることに触れ、新たなデータ世界が形成されている中で、人間がどのように生きていくべきかを再考すべきであることを指摘。中国では、デジタルデータが資産として認識される動きが加速していて、データの所有権や使用権が新しい価値を生む可能性を語った。

広がる未来予測と宇宙通信の展望

 カンファレンスの後半では、今後、データの価値が現れる分野として、宇宙ビジネスが挙げられ、人工衛星から取得するビッグデータの重要性について議論された。9月19日、北海道大樹町のインターステラテクノロジズ(IST)は、研究開発を促進する文部科学省の「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」で、新たに最大46.3億円の交付が決まった。同社は、堀江氏がファウンダーとなっている日本初のロケットと人工衛星による垂直統合型スタートアップだ。

 低価格で高頻度の打ち上げが可能な小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発により、国内の自律的な宇宙アクセス拡大に貢献するとともに、国際競争力のある宇宙輸送サービスの実現を目指している。

 堀江氏は「スペースXは、ロケットを数多く打ち上げていて、人工衛星からのデータを活用することによって地球規模の観測や新たなビジネスの展開が可能になっている」と指摘した。人工衛星同士をレーザー光通信でつなげ、宇宙にインターネットのバックボーンネットワークを構築するプロジェクトを紹介。宇宙には国境がないため、国の規制を超越したビジネス展開が可能になるという。

 さらに堀江氏は、ビットコインやイーサリアムといった暗号資産を用いた資金調達により、衛星の所有権自体も、所有者や管理者が存在せず、参加者同士の投票によって意思決定をし、事業やプロジェクトを推進できるDAO(分散型自律組織)的な管理もできるようになると話す。宇宙ビジネスが革新的な市場へと発展していく未来を描いた。

文部科学省のSBIR事業で新たに最大46.3億円の交付が決まった(出典:インターステラテクノロジズのプレスリリースより)
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