堀江氏は、宇宙ビジネスの可能性として、人工衛星により電磁波を利用して、地球の対象物をリアルタイムで観測できるリモートセンシングの技術の活用についても述べた。これまで観測衛星の多くはカメラ(光学センサー)によって地表の映像を撮影する光学衛星が主流だった。
しかし、近年ではカメラの代わりにマイクロ波レーダーを使用したSAR(合成開口レーダー)衛星が登場し、地表から反射された電波から、対象物の大きさや表面の性質、距離などが分かるスキャニング技術の進展によって、リアルタイムに地球全体を観測できるようになるという。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は7月31日、H3ロケット3号機で7月1日に打ち上げた先進レーダー衛星「だいち4号」の初観測画像を公開した。だいち4号はJAXAと三菱電機が開発。雨天や夜間でも観測可能なSARを使い、地震や火山活動に伴う地殻変動や災害の状況、森林や海洋の環境変化を捉えられる仕様だ。
SARは、小型化・低価格化が進むとともに生成AI技術と連携することにより画像解析技術の向上もみられ、ますます実用性が高まっている。
堀江氏は、人工衛星が今後も増えていく中で「ダウンリンク(衛星から地上に向けた電波)の通信速度など課題はあるものの、宇宙でデータの解析処理を実行し、必要な情報だけにデータ量を圧縮して地上に伝送する『エッジコンピューティング』の技術が進んでいる。宇宙からのスキャニングにより、データのリアルタイム化がさらに進み、想像もできない世界がやってくる」と述べた。
NTTとJAXAは2023年1月、人工衛星による観測で得た大量のデータを効率的に地上へ伝えるため、軌道上の「宇宙データセンター」であらかじめ処理するAI技術の共同研究を開始した。生成AIは、宇宙から取得される膨大なデータの解析や、衛星を活用した地球観測、さらには宇宙空間でのインフラ整備においても重要な役割を果たしていくといえる。
世界が成長産業として注目する宇宙産業の市場規模は、2040年に100兆円まで拡大するという試算が出ている。米国を筆頭に、宇宙ビジネスの覇権争いが繰り広げられている中で、日本は、これまでに培ってきた技術力や革新的なスタートアップの取り組みを強化し、国際競争力を高めていく必要があるだろう。ISTのような日本企業が、宇宙開発で新たな可能性を示すことによって、世界でも独自のポジションを確立し、次世代の宇宙ビジネスをリードする存在となることが期待される。
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