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推論に強い「OpenAI o1」で“顧客の不満”を探れ CX向上に生成AIを生かす方法その悩み、生成AIが解決(1/2 ページ)

» 2024年10月28日 07時00分 公開
[酒井麻里子ITmedia]

連載:その悩み、生成AIが解決

アイデアが浮かばない、こんな無駄な作業なくしたい――。ビジネスパーソンを悩ませる日々のさまざまな困りごと、ChatGPTに聞いてみませんか? ITジャーナリストの酒井麻里子氏がプロンプトの書き方を伝授する。

Q.カスタマーサポートの対応後に、顧客から予想外にネガティブなフィードバックを受けることがあります。どこに不満があったのか具体的に探ることはできますか?

 9月にリリースされた「OpenAI o1」は、“複雑なタスクの推論”に強みをもつとされるモデル。現在はChatGPTの有料プランユーザー向けにプレビューが提供され、難解な数学の問題を解いたり、複雑なコードを理解したりできる点が注目されている。

 しかし、一般のビジネスパーソンは使いどころに迷うかもしれない。

 このモデルの「じっくり考えて答えを出す」という特徴を生かすことで、チャットなどの文章から相手の感情を推測するといったことも可能だ。

有料プランのユーザーならモデル選択のメニューからo1のプレビューを選んで使用できる

 今回は「カスタマーサポートにチャットで対応し、顧客の困りごとは解決できたものの、アンケートの評価が良くなかった」という状況を想定し、チャットの履歴から顧客の不満がどこにあったのかを探ってみる。

著者プロフィール:酒井麻里子(さかい・まりこ)

ITジャーナリスト/ライター。生成AIやXR、メタバースなどの新しいテクノロジーを中心に取材。その他、技術解説やスマホ・ガジェットなどのレビューも。著書に『趣味のChatGPT』(理工図書)、『先読み!IT×ビジネス講座ChatGPT』(共著・インプレス)など。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。株式会社ウレルブン代表。XRと最新テクノロジーのWEBマガジン「TechComm-R」運営。


「どこが不満だったか」チャット履歴から推測する

 ChatGPTの画面左上のモデル選択で「o1-preview」を選んでから、以下のプロンプトを記載し、続けてチャットの履歴を貼り付ける。その際、チャットの個人情報や機密情報に関わる部分は、必ず削除したり伏せ字に置き換えたりするよう注意しよう。

【プロンプト】

以下はカスタマーサポートと顧客とのチャットでのやり取りです。問題が解決したにもかかわらず、チャット終了後のアンケートでは「やや不満」との回答でした。顧客が不満を感じた要因はどこにあると思いますか? それぞれのやり取りに対する「顧客の本音」を推測してください。

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顧客:こんにちは。Web会議用マイク付きスピーカー「XXX-01」を購入したのですが、無線でPCに接続できなくて困っています。

サポート:なるほど。PCのBluetoothはオンになっていますか?

顧客:たぶんオンになっていると思いますが、確認の仕方が分かりません。

サポート:まず、PCの画面の右下にある通知領域を見て、Bluetoothアイコンが表示されているか確認してください。もしアイコンがあれば、クリックして設定を開いてください。

(中略)

顧客: 見つかりました。これでいいのかな……? 接続できたような気がします。

サポート: それはよかったです! 何か他にお困りのことがあれば、いつでもお知らせください。

 以下に示す出力された回答では、それぞれの発言の下に「本音」が記載されている。こうして可視化すると、顧客の理解のペースを十分に考慮せずにサポートを進めてしまっていた可能性が浮かんでくる。

【回答】

顧客の本音の推測

1.顧客:こんにちは。Web会議用マイク付きスピーカー「XXX-01」を購入したのですが、無線でPCに接続できなくて困っています。

  • 本音:早く使いたいのに、接続できなくてイライラしている。助けてほしい。

2.サポート:なるほど。PCのBluetoothはオンになっていますか?

  • 本音:そこまでは確認していない。どうやって確認するのか教えてほしい。

3.顧客:たぶんオンになっていると思いますが、確認の仕方が分かりません。

  • 本音:パソコンの設定に詳しくない。具体的な確認方法を教えてほしい。

4.サポート:まず、PCの画面の右下にある通知領域を見て、Bluetoothアイコンが表示されているか確認してください。もしアイコンがあれば、クリックして設定を開いてください。

  • 本音:言われた通りにしたけど、アイコンが見つからない。どうすればいいの?

5.顧客:アイコンは見当たりません。どうしたらいいですか?

  • 本音:先に進めない。もっと分かりやすく教えてほしい。

6.サポート:それでは、Bluetoothが有効になっていない可能性があります。設定を開くために、スタートメニューをクリックし、「設定」を選択してください。その中に「デバイス」という項目があるはずです。

  • 本音:スタートメニューの場所もよく分からないけど、とりあえずやってみる。

7.顧客:はい、「設定」に入りました。「デバイス」を見つけました。

  • 本音:なんとかここまでは来たけど、まだ時間がかかりそう。

8.サポート:そこをクリックすると、「Bluetoothとその他のデバイス」という項目があると思います。そこをクリックして、Bluetoothが「オン」になっているか確認してください。

  • 本音:やっとBluetoothの設定にたどり着いた。次はどうするの?

(中略)

9.サポート: それはよかったです!何か他にお困りのことがあれば、いつでもお知らせください。

  • 本音: 問題は解決したけど、サポートの対応には少し不満が残る。

顧客が不満を感じた要因の推測:

  • サポートの説明が段階的で、全体の流れが見えにくかった:顧客はパソコンの操作に不慣れで、一度に全体の手順を知りたかった可能性がある。
  • 具体的な操作方法の説明が不足していた:「スタートメニュー」や「設定」の場所など、基本的な部分から詳しく教えてほしかった。
  • 問題解決までに時間と手間がかかった:顧客は早く解決したかったが、何度も行き詰まったため、ストレスを感じた。
  • サポートが顧客の理解度や状況を十分に把握せずに対応した:顧客のスキルレベルに合わせたサポートが求められていた。

 なお、汎用モデルのGPT-4oを使った場合、出力されるのはチャットのやり取り全体に対するフィードバックのみとなる。個別の会話対して考察し、どこに問題があったのかを探ることができるのは、時間をかけてじっくり考えるo1モデルならではの強みだ。

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