neoAIの千葉CEOは、ROBOT PAYMENTと提携した理由について「大量の過去データを持っているから」だと話す。
「生成AIの開発では膨大な資金を持っているシリコンバレーの米国企業に太刀打ちできないので、大量のデータを保有している日本企業に特化する形のサービス提供を目指しています。シリコンバレーの企業がまねできない、膨大なデータをAIに落とし込めるユニークな生成AIを創ろうと思い、大量の過去データを保有するROBOT PAYMENTと手を組むことにしました」
千葉CEOは、neoAIが得意としているのが「統一できていない不完全な非構造データを、構造データに修正すること」だと話す。具体的には「一部のデータが欠損していたり、不ぞろいであったりしても、多くのデータを学習してきたAIが、不足していたデータを穴埋めして修正し、きれいにそろえてくれます」と説明する。
例えば過去のデータには、会社名がトヨタ自動車、豊田自動車、(株)トヨタなど、同じ会社でも異なる表記が混在している。これまではこうした表記の違いがあると、同じ会社だと認識するのが難しかった。しかし生成AIを使えば、これらを同じ会社だと判断するのだ。簡単に名寄せして、データの集積、分析ができる。千葉CEOは「数字の表記なども和暦と洋暦が混じっていると、同じものと認識できない不具合が生じていましたが、現状はどちらかにそろえて集計できます」と、生成AIの修正能力の高さを指摘した。
藤田氏は、生成AIの構造化する技術に期待している。
「データの欠損により、これまではデータ分析に混乱が起きていました。しかし生成AIを活用すれば、古くて使えないと思われていた過去の膨大なデータを『お宝』として蘇えらせることができます」
過去データの活用に加え、外部のデータなども付け足すと、その企業のトレンドもつかめるという。
「自治体など行政の場合は、100%そろった正しいデータが必要なため、システム化する際に悩むことが多かったようです。しかし、われわれはデータが完全でなくてもAIを使って予測ができます。行政とは利用の仕方が違うので、データ数字が多少ズレていても活用できます」(藤田氏)と、行政との違いを指摘する。
鳴り物入りで2021年9月に設立されたデジタル庁も、自治体ごとに異なるデータに混乱して、当初計画していたような免許証、健康保険証などのデジタル化を思うように進展させられなかった。最新の生成AIを使えばデータの統一化も進みそうだ。
今後の展望について清久社長は「まずは与信管理で成果を出したい」と話す。
「AIも進化しているので、いまは人がやっている(代金回収の)督促の仕事も、電話でAIにやらせるような世界になるのではないでしょうか。人がしたくない仕事をAIが代わりにしてくれるようになるかもしれません」
藤田氏もメリットが大きいことを強調する。
「お金の流れがスムーズになれば、信用を取得するキャッシュフローも良くなります。いままで人が担っていた業務を、AIにやらせて仕組み化すれば業務がラクになります。AIを使って企業の『健康診断』もできるようになり、経営改善にも役立ちます」
請求管理業務は内容が複雑な上に、個社ごとの決まりごとが多いため、自動化、データ化が難しいと見られてきた。しかし、豊富な過去のデータを保有するROBOT PAYMENTと生成AIに強いneoAIが組めば、この難題が解決できるかもしれない。請求管理という手間のかかる領域がデータ化され、結果的に資金の流れがスピードアップする可能性がある。
特に信用力がないために銀行などから十分な資金を借りられなかったスタートアップにとっては、新たな資金調達への道が開けることになるはずだ。デジタルで遅れを指摘されてきた日本経済にとっては、プラスの材料になる。生成AIの決済分野での応用に注目していきたい。
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