これら3点の勘違いを反転させると、退職代行事業者から連絡を受けた際にキレてしまう会社に足りていないものが何かが見えてきます。
まず、退職代行事業者に悪態をついて退職者側の正しさを証明してしまっているようであれば、自社内でも同様の言動が横行してパワハラ体質になっている可能性などを認識し、社員が心穏やかに働けるよう、経営者や管理職など強い立場にいる人たちの態度を改める必要があります。
また、社員の退職意向に気付かなかったようであれば、職場でのコミュニケーションのあり方が淡白だった可能性があります。月次で1on1を行って社員の様子を確認する機会を設けたり、定期的にエンゲージメントをチェックして個々の状況変化に合わせて対処するなど、社員のかすかな異変にも敏感に気付いて対応できる体制整備が重要になるはずです。
さらに、これまで無責任な社員を採用してきてしまったのだとしたら、採用選考の際にチェックするポイントを修正するなど手法の見直しをかけ、入社後のミスマッチを減らす努力をしなければなりません。
これらの対応を進め改善できた会社は、以下のような特長を有することになります。
(1)ハラスメントがなく、社員が心穏やかに働ける環境が整っている
(2)社員のかすかな変化に気付くことができるほど、密なコミュニケーションがとれている
(3)入社後のミスマッチが生じにくく、協調性と責任感を備えた人材が集っている
退職代行サービスを利用するのではなく、退職希望者が直接意思を伝え、引き継ぎなど果たすべき役割をきちんと完結させた上で円満に退職するに越したことはないでしょう。
一方で、退職代行事業者にキレてしまう会社が勘違いに気付いて正すことができれば、逆に(1)〜(3)のような職場に生まれ変わる可能性もあるということです。そうなれば、そもそも退職代行を使われるような事態が減っていくように思います。
また、職場内のさまざまな課題が改善されていけば、働いている社員にとっても働きやすい環境になって退職者が発生するリスク自体を減らすことも期待できます。結果、職場そのものの魅力が高まり、新たに人員を採用する際にも他社より選ばれやすくなるエンプロイメンタビリティ(employmentability:会社の雇用能力)の向上も期待できます。
退職代行事業者は、会社からすると煙たい存在なのかもしれません。しかし、耳の痛い話ほど、得てして有益な情報であったりもします。会社が抱える問題を詳らかにし、気付きを与えてくれる退職代行事業者にキレて悪態をつくというのは筋違いというものです。
職場ではよく、上司が部下に「何をふてくされているんだ。忠告してやっているんだから、ありがたいと思って聞け」などと説教するシーンを見かけます。退職代行事業者から連絡を受けた会社は、むしろ部下に伝えているそんな言葉を自らの方に向け、忠告に耳を傾けてお手本を示した方が、多くのメリットを享受できるのではないでしょうか。
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