2000年に松屋が400円だった牛丼を290円に。翌2001年4月にすき家が400円から280円に、同年8月に吉野家が同じく400円から280円としたのがきっかけで、牛丼の価格戦争が始まりました。この競争は、2004年ごろまで続きました。
他社の値下げ競争に、吉野家が満を持して参戦したことで始まった牛丼の価格戦争ですが、安さゆえに利益が出ていなかったのかというと、意外にもそうではありませんでした。このころの吉野家ホールディングス(HD)の営業利益率は8〜11%台、吉野家単体では同13〜18%台。一般的な飲食業界は同3〜5%台であることを踏まえると、これは驚異的な数字であり、かなりの高収益だったのです。
牛丼店のみを展開している松屋フーズホールディングス(HD)も、10〜13%台と高い営業利益率を維持していました。すき家を運営するゼンショーHDの同時期を見ると、同3〜7%台とやや低め。すき家単体での財務諸表を出していないため細かい数字は分かりませんが、このころは低価格であるにもかかわらず、3社とももうかっていた時期であるといえるでしょう。
では、原材料の仕入れから販売、代金を回収するまでの期間を示すキャッシュ・コンバージョン・サイクル(以下、CCC)はどうだったのでしょうか。
吉野家は、2000年度のCCCはマイナスでした。CCCの数字が小さいもしくはマイナスということは、お金がどんどん入ってきていることを示しています。支払いがかなり先で、支払いまでの間もずっと売れ続けており、買掛金を払うまでのサイクルが長いことを示しています。店舗で牛丼がどんどんと売れ、たくさんお金が入って来ている状態です。この時期、ゼンショーHDも松屋もマイナスであったことから、とても効率の良いビジネスだったことが見て取れます。
価格戦争が始まった当初、営業利益はもちろん、CCCという観点で見ても非常に楽な時代であったことが分かります。資金繰りが楽であれば、運転資金を借りる必要がなく、レバレッジを効かせた積極的な投資が可能になります。積極的に成長のためにお金を使えるため、企業にとっては非常にうれしい状態です。
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