「給料が安いので上げてください」
このように言われたら、上司のあなたはどう答えるだろう?
「会社が賃上げしてるじゃないか」
「分かった。会社に掛け合ってみる」
「私だって我慢してるんだ」
いろいろな返し方があるだろう。しかし、どんな問題解決の手順も同じ。まず事実確認から始めるべきである。なぜなら「安い」という表現は比較形容詞であり、具体性に欠けるためだ。
具体的に、いくら程度の給与を希望しているのか。なぜその金額が必要なのか。現在の給与水準と比較して、どのような根拠があるのか。これらの事実を把握することだ。
このように、「安い」「高い」「強い」「弱い」といった言葉では、何を基準に判断しているのかが不明確だ。だから比較形容詞を使った曖昧(あいまい)な表現はできる限り避けたほうがいい。
例えば陸上部のコーチが「もっと速く走れ」と選手に言い続けたらどうだろう?
「もっと速くだ!」
「まだ足りない。もっと速く」
と言われ続けたら選手は疲れ切ってしまうだろう。自分なりに頑張って速く走ろうとしているのに、「もっと」「もっと」といわれると追い詰められていく。
私は営業コンサルタントなので、よく企業経営者から「営業力が弱いので、強くしてほしい」
といわれる。しかし、どの程度弱いのかが分からないし、どこまでいったら強くなるのかもハッキリしない。給与についても同じだ。「安い」といわれてもどれぐらいの金額なら満足なのかが判断できない。
だからまずは事実確認が必要なのだ。
「どれぐらいのスピードで走ったらいいのですか?」
「中期経営計画を達成できたら、営業力が強くなったと判断していいのですか?」
「業界平均と同じ給与水準になったら、よいのかな?」
いずれも、相手の期待を具体的に知る必要なステップである。次は給与交渉に移る上で注意しておきたい「3つの落とし穴」について説明したい。
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