部下から「給料を上げてください」と言われたら、上司のあなたはどう返す?「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/6 ページ)

» 2024年12月05日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

給与に関する会話は「事実」からはじめよう

 「給料が安いので上げてください」

 このように言われたら、上司のあなたはどう答えるだろう?

 「会社が賃上げしてるじゃないか」

 「分かった。会社に掛け合ってみる」

 「私だって我慢してるんだ」

 いろいろな返し方があるだろう。しかし、どんな問題解決の手順も同じ。まず事実確認から始めるべきである。なぜなら「安い」という表現は比較形容詞であり、具体性に欠けるためだ。

 具体的に、いくら程度の給与を希望しているのか。なぜその金額が必要なのか。現在の給与水準と比較して、どのような根拠があるのか。これらの事実を把握することだ。

 このように、「安い」「高い」「強い」「弱い」といった言葉では、何を基準に判断しているのかが不明確だ。だから比較形容詞を使った曖昧(あいまい)な表現はできる限り避けたほうがいい。

 例えば陸上部のコーチが「もっと速く走れ」と選手に言い続けたらどうだろう?

 「もっと速くだ!」

 「まだ足りない。もっと速く」

 と言われ続けたら選手は疲れ切ってしまうだろう。自分なりに頑張って速く走ろうとしているのに、「もっと」「もっと」といわれると追い詰められていく。

 私は営業コンサルタントなので、よく企業経営者から「営業力が弱いので、強くしてほしい」

 といわれる。しかし、どの程度弱いのかが分からないし、どこまでいったら強くなるのかもハッキリしない。給与についても同じだ。「安い」といわれてもどれぐらいの金額なら満足なのかが判断できない。

 だからまずは事実確認が必要なのだ。

 「どれぐらいのスピードで走ったらいいのですか?」

 「中期経営計画を達成できたら、営業力が強くなったと判断していいのですか?」

 「業界平均と同じ給与水準になったら、よいのかな?」

 いずれも、相手の期待を具体的に知る必要なステップである。次は給与交渉に移る上で注意しておきたい「3つの落とし穴」について説明したい。

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