こうした実態を踏まえ、更年期症状がある女性社員に対する支援の方向性はどのようにあるべきか。調査では、職場における支援を「セルフケア」「ラインケア(上司による支援)」「ピアサポート(同僚による支援)」の3つの観点から分析した。
その結果、食事改善などのセルフケア、柔軟な働き方を認める上司のラインケア、情報提供や情緒的支援を行う同僚のピアサポートが、いずれもジョブパフォーマンスの向上に寄与することが判明した。
また、離職防止の観点では、上司による評価基準の明確化や健康重視の姿勢表明、柔軟な働き方の許容が効果的で、特に上司の配慮やケアにより継続就業意向が約2倍に高まった。一方で、職場での症状の軽視や理解不足は離職リスクを高める要因となっている。
調査では、更年期症状を自覚している人ほど、温度調整や食事改善、運動など積極的なセルフケアを実践していることも判明。セルフケアを促進するためには、本人の自覚を促すことが重要な第一歩となる。
そのために企業は、専門家への紹介や更年期診断チェックシートの社内公開など、従業員が自身の状態を客観的に把握できる機会を提供することが有効だという。
同僚や上司に相談しやすい職場環境づくりも重要だが、現状では上司への相談は1割程度、同僚への相談も2割未満にとどまる。
要長期治療レベルの女性の約6割が同性の上司にも相談しづらいと感じており、これは男性上司(約8割)との差が20ポイント程度と小さい。上司の性別にかかわらず相談のハードルが高い状況が明らかになった。
調査では相談を促す3つのポイントを提示している。更年期に関するネガティブな言動の予防、上司への信頼感の醸成、従業員の「ヘルプシーキング力(頼る力)」の向上だ。特に最後の点では、健康情報への苦手意識や評価への不安、症状を話すことへの羞恥心といった認知バイアスを、適切な知識提供で解消する必要があるとした。
更年期に対する具体的な取り組みを講じている企業もある。
LINEヤフーでは常務執行役員以上が全員「女性の健康検定」を受験し、上層部から現場への理解浸透を図っている。味の素では健康経営の一環として、食事・運動・睡眠を意識したセルフケアの習慣化支援や、全従業員向けの栄養教育を実施しているという。
「職場の理解が必要」という漠然とした課題に対し、今回の調査で具体的な支援の在り方が明らかになった。セルフケアから職場内支援まで施策は多岐にわたるが、企業には実行可能な対策から着実に進めることが求められる。
パーソル総合研究所の砂川氏は「今回明らかになった職場支援の要素は、全て『職場の理解』に関わるもの。これら一つ一つに目を向けて対策を講じることが、理解不足という問題の解決につながるのではないか」と述べた。
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