女性の就業率向上と就労期間の長期化に伴い、更年期障害による離職やパフォーマンス低下への対策が企業の重要課題となっている。
更年期障害は女性特有の問題と認識されがちだが、近年では男性の更年期障害への認識も広がっている。行政は2026年から更年期を含む健康課題への取り組みを企業の行動計画の公表項目に追加する方針だ。
これまで、更年期障害に対する企業側のフォローは少なかった。しかし、イライラ、身体・精神の不調などが続く中で働く中年のビジネスパーソンに対し、企業が適切な支援をできれば、会社全体の生産性が高まるかもしれない。パーソル総合研究所の砂川和泉研究員に、調査データとそこから見えてきた効果的な職場内支援の方向性を聞いた。
更年期とは閉経前後の10年間を指す。日本人の平均閉経年齢は50歳前後だが、個人差が大きい。顔のほてりやのぼせ(ホットフラッシュ)などの症状のうち、日常生活に支障を来すレベルを「更年期障害」と定義する。
更年期症状および障害は、女性特有の問題ではない。砂川氏は「男性の更年期というのは実は病態が複雑で、まだ十分に解明されていない面もある。企業が施策を考える上では、男性にも更年期があるということを押さえておくのが重要なポイント」だと指摘する。
企業には性別を問わない健康支援が求められるが、個人が症状を自覚しにくいため、支援対象の把握には注意が必要だ。
更年期の健康管理が注目される背景には、女性の就労長期化に加え、更年期症状による経済的損失の大きさがある。
経済産業省の試算では、更年期症状による損失は女性で1.9兆円、男性で1.2兆円に上る。政府は2022年2月以降、健康診断の問診票への女性特有の健康課題項目の追加や、企業の行動計画における更年期対策の公表検討など、対策を進めている。
これまでの企業の取り組みは特別休暇の創設など、休暇制度の整備に議論が集中しがちだった。しかし、より包括的な支援の在り方を検討する必要があると、砂川氏は話す。
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