日本上陸から45周年を迎えたタワーレコード(以下、タワレコ)の業績が好調だ。直近の第43期(2024年2月期)決算公告によると、純利益は18億8300万円。前期(純利益10億1500万円)から85.5%増となり「過去最高益」の数字である。
1979年に日本へ進出したタワレコは、輸入レコードの卸売りに始まり、今ではCDショップというイメージが強い人も多いだろう。日本レコード協会の統計によると、国内のCD販売額は2014年に1840億8800万円、2023年には1390億9500万円と減少している。にもかかわらず、タワレコが好調なのはなぜか。
タワレコが好調な背景の一つには“推し活推し”がある。
同社では近年「応援する人を応援する」というキーワードを設定し、音楽を中心としたコンテンツの販売だけでなく、推し活を楽しむ人の支援に注力している。例えば良い席でのライブ当選を願う「お守り」やライブ中に使ううちわを保護する「うちわのキャリーケース」といった、従来のタワレコと異なるイメージのアイテムを販売しているのが特徴的だ。
タワレコが推し活関連のグッズに参入したのは、2015年。当初は「推し色」という打ち出し方で、銀テープのキーホルダーを発売した。これはライブの演出で客席に向かって放出される銀色のテープをキーホルダーとして身に付けられるようにした商品だ。当時は今ほど「推し」「推し活」という言葉が一般的ではなかったが、なぜタワレコは着目したのか。長谷川真人氏(店舗事業本部 本部長)は次のように振り返る。
「タワレコは、もともと洋楽やインディーズといった、コアなファン向けのコミュニケーションに強みを持っていました。スタッフ自らが特定のジャンルやアーティストのファンであり、その『好き』という気持ちを生かしてさまざまな取り組みをしていたんです」
「当時はSNSの影響力が高まっていたタイミングでもありましたから、まずは大衆に人気のあるアーティストの中にいる、コアなファンをしっかりとつかむ。そこから話題を広げていくという戦略を策定し、情報発信や施策をアップデートしていきました」
そこで参考にしたのが、アイドルグループだという。アイドルグループにはメンバーごとのイメージカラーがあり、タワレコの強みである「コアなファンへのアプローチ」「スタッフの熱量」と掛け合わせることで、コアからマスへと広げていく戦略を実現できないかと考えた。
そうして2015年に発売したのが「タワレコ推し色グッズ」だ。当初は5種を発売し、中でもユニークなのが、ライブ会場に舞う銀テープをキーホルダー・リストバンドの2WAYで楽しめる「銀テープキーホルダー」。発売から10年近くが経過した今も主力を張り続ける人気アイテムだという。
「銀テープキーホルダーは、ファンの方々の情報を基に企画しました。もともと、100円ショップの商品などを駆使し、銀テープを保管したり、持ち歩いたりするためのアイテムを自作している人がいたのです。であれば、最初から銀テープを楽しむ目的のアイテムを作れば面白いのではないか、と考えました」(長谷川氏)
推し活関連のグッズは現在、店舗スタッフやCD・DVDを販売する部署などの意見も交えながら、年間で20〜30個を新たに投入している。銀テープキーホルダー以外に面白いのが「推し活お守り」で、京都・車折神社で祈祷(きとう)してから各店舗に納品しているというほど、力を入れている。
ちなみに企画開発を主管する部署の蓮田由希氏(商品本部 商品統括部 商品部 バイヤー)によると、銀テープキーホルダーや推し活お守りのいずれも「おそらく手掛けたのは当社が初」。今では類似商品も多く見かけるが、同社が手掛ける推し活アイテムは実用新案権や意匠登録権を取得しているものも多いという。
やや古いデータだが、2019年時点で推し活グッズの購入者層は8割が女性だ。年代別では20〜29歳が3割を占め、比率は現在も大きく変わってはいない。
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