分かりやすいのは、公式Webサイトに讃岐富士の写真とともに掲げられた「丸亀製麺が憧憬(しょうけい)する風景」という言葉だ。「憧憬」とは「憧れ」である。
丸亀製麺は香川にルーツがあるわけでもなく、讃岐うどんの伝統を継承している立場でもなく、単なる「讃岐うどんファン」ということを、趣のある表現で宣言しているのだ。つまり厳密にいえば、丸亀製麺というのは「讃岐うどん文化」をリスペクトして、製麺所の味や世界観を忠実に再現した「コンセプトレストラン」なのだ。
しかし、一般消費者はそんなややこしいものの見方はしないので、「丸亀製麺=香川に縁のある讃岐うどんチェーン」といまだに思っている人も少なくない。香川発祥のはなまるうどんからすれば、これは耐え難い屈辱だ。しかも、店舗数や海外展開でも大きく水をあけられている。
そんな絶対王者を引きずり下ろすため、本社の香川移転によって、丸亀製麺が口が裂けても言えない「われこそ本物の讃岐うどん」というメッセージを強く打ち出し始めたのではないか。
その強い決意を読み取れるのが、はなまるうどんが『四国新聞』の1月1日朝刊に掲載した「全ては讃岐うどんとともに。」という新聞広告だ。そこには「移転に関する思い」として、こんなメッセージがつづられている。
「本当」の香川生まれであるはなまるが、
「本物」にこだわった一杯の讃岐うどんを、
「正直」に真心を込めて、お届けしたい。
「香川生まれではない讃岐うどん」に対して、マウントをとっているようにも見えなくない。しかもこの文章の中には数えてみたら「香川」「讃岐」というワードがそれぞれ5回も繰り返されている。2025年のはなまるうどんは、「香川」と「讃岐」でリブランディングしていこうという意気込みが伝わってくる。
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