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数字に“とらわれる”マーケターの現代病 「普通のことを普通に考える」だけでいい(2/2 ページ)

» 2025年02月03日 07時00分 公開
[小林幸平ITmedia]
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「普通のことを普通に考える」スキルを身に付けよ

 実際に顧客の声を聞いた後に、それを事業に生かせなければ意味がない。これを適切に行うのが、結局一番難しい。

 まず、どんな購買行動をしている顧客にヒアリングをするのかも重要だ。顧客の声の中からノイズになるメッセージを外して、重要なその一言にたどり着くまで、その一点を深掘り続けることが求められる。

 このプロセスを一言で言えば、「普通のことを普通に考える」ということなのだが、実は多くの人が苦手としている部分でもある。せっかく顧客インタビューをしても、なぜかアクションにつながらない。

 アクションになかなか生かせないのに、インタビューは物理的に結構な時間を取るものだから、自然と顧客の声を聞くことから遠ざかっていくことが多い。私からすると、無限にあるデータと“にらめっこ”して、そこからインサイトなるものをひねくり出すほうがよっぽど天才的な所業に見える。

 じゃあ”普通のことを普通に考える”というのはどういうことなのか。

 例えば、フィットネスジムを事業として展開するなら、「集客、解約率、単価、店舗数の掛け算が重要」「フィットネスに通うニーズは、筋トレかダイエットか健康維持」──こんな簡単な把握ができればいい。そしてそこから、分からないことは仮説を立てて、検証していけばいい。

 顧客インタビューも同じで、まず「何を検証するために顧客と話すのか」という強烈な仮説がないとやる意味がない。そんな強烈な仮説があるときは、顧客インタビューをやらされるのではなくて、むしろ心から喜んでやらせてほしいと思っているはず。

(写真はイメージ、iStockより)

 今回は現代のマーケターが抱える課題と、それを乗り越えるための顧客への向き合い方について解説した。

 「マーケティングの能力として重要なことは?」と聞かれると、私はいつも「普通のことを普通に考えることができるかどうか」と回答している。一人でも多くの方が、ここからヒントを得て、顧客に向き合う機会を増やしてもらえれば幸いである。

筆者プロフィール:小林幸平(株式会社FiT取締役)

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京都大学大学院医学研究科卒業後、 日本ロレアル株式会社に入社。新規ヘアケア製品ノーシャンプーのプロダクトマネジャーとして新製品の開発および販売戦略立案を担当し、同製品は楽天市場総合ランキング1位を獲得。その後デジタル・イーコマースにおけるマーケティング責任者として事業拡大戦略の立案と推進に取り組んだのち、2019年8月よりメイベリンニューヨークのアジアヘッドクォーターにてリージョナルマーケティングマネジャーとしてビジネス統轄を担う。その後、2021年2月よりノバセル株式会社の執行役員として同社事業を牽引。現在は株式会社FiT取締役。

合同会社スモールミディアムCEOとして、D2Cブランドの経営も行う。

公式noteはコチラから。


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