「先方からなかなか注文が取れない。これまでコミュ力の低い人物が担当していたときの方がよかったくらいです。そのうち先方から担当者を代えてくれ、前の人はいないのか、っていう連絡が来て、困っているところです」
『担当を代えてほしいという要望の理由は何だったんでしょう』
「私もそれが気になって、先方に出向いて話を聞いてきました。向こうが言うには、彼は非常に社交的でよくしゃべるし、面白いことも言うけれども、話していて疲れるし、こっちの求めているものをくみ取ってくれないと。そして、気持ちのふれあいがなく、あんな感じでは信頼関係が築けないとまで言われました」
『よくしゃべるし、面白いことも言うけど、気持ちのふれあいがなく、疲れる、ということですね。その方は、相手の反応に関係なしに一方的にしゃべりまくるようなところはないですか?』
「あ、まさにそんな感じです。そう言われてみると、私も彼と話してると、こっちの言いたいことを言うタイミングが取れなくてイライラすることがあります」
『やっぱりそうですか。その場を盛り上げるような面白おかしいしゃべりができる人物をコミュニケーション力が高いと見なす風潮がありますけど、ほんとうのコミュニケーション力には傾聴力も含まれます。一方的にしゃべりまくるようだと、相互性がないので、コミュニケーションがうまくいっていることにはなりません』
「なるほど。相互性ですか。傾聴力……」
『その方と話していてイライラするというのも、よくしゃべるけれどもこっちの話を傾聴してくれない、こっちの気持ちをくみ取ろうとしてくれないからなのでは。良いコミュニケーションというのは、ただ一方的にしゃべるのではなく、相手の思いを引き出すような、そしてそれを受け止めるようなものでしょう』
「相手の思いを引き出し、それを受け止める……」
『面白い話で笑いを取ったりできても、相手の気持ちがスッキリするような対話ができないなら、コミュニケーション力が高いことにはならないのではないでしょうか』
「なるほど……よくしゃべるし、笑いを取る能力が高いから、コミュ力が高いと思ってたんですけど、確かに人の話をちゃんと聞かないところがあるから、相手をイライラさせちゃうのかもしれません。そう考えると、取引先の人の言い分が分かるような気がします。それじゃ、コミュニケーション力が高いことにはならないですね」
『お話を伺っていると、どうもそのようですね』
「そうすると、彼のコミュニケーション力を向上させるには、どうしたらいいでしょうか?」
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