東急リゾーツ&ステイは2月21日、日本橋で運営する「東急ステイ日本橋」をリニューアルオープンした。ソフトバンク特別顧問の宮内謙氏率いるアートのスタートアップ、Kアート(東京都港区)とコラボし、館内のあらゆる箇所でアートを体感できるインテリアデザインにしている。約7割が外国人宿泊客である同ホテルの顧客満足度を高める狙いだ。
同日に開いた内覧会で東急リゾーツ&ステイ取締役 常務執行役員の小澤広倫氏は「アートがあることによって(海外の)お客さま同士やスタッフとのコミュニケーションが生まれ、満足度も高まる」と語った。
東急ステイではインバウンド需要の急増と宿泊客の属性の変化に伴い、海外客を迎える機会が増えた。外国人宿泊比率は70%を超え、アジアのみならず、欧州、北米、オセアニアなど幅広い地域から客を迎えている。旅の目的やニーズが多様化している中、ワンランク上の体験を提供するライフスタイルホテルとして進化を続けているという。
今回のリニューアルでは、多様なアーティストと歴史ある日本橋というエリアについて半年間にわたり、議論を重ねた。客室から共用部の細部に至るまで、展示の仕方にこだわっている。単なる客室展示にとどまらず、作品を通じて日本橋の魅力を知り、体験し、ゲスト同士で語れるような、街と一体化したホテル空間を演出した。
今回編さんしたコンセプトブックを通じても、作者の思いや街の歴史を、さまざまな角度から訴求していく。今後は、協力アーティストとのSNS連携に加え、作品の販売までを視野に入れて展開するという。
Kアートは、新進気鋭のアーティストをはじめ、多様なバックグラウンドやスタイルを持つアーティストたちの活動支援・展示を手掛けている。生活者がよりアートを身近に感じられるよう、アーティストの活躍の場を個展や美術展示のみではなく、さまざまな場所へ拡げていくという。ファウンダーの宮内氏は同社設立の理由を語る。
「私自身がITの世界で長年やってきたのですが、最近サイエンスと共にアートが非常に大事だと感じています。やはり海外に足を運ぶと、いろんなところにアートがあふれているんですね。日本のアート市場を大きくしたいという志と、日本中の空間をアートで彩り、アーティストがどんどん育っていく環境を作りたいと思い設立しました」(宮内氏)
欧米型志向に見られるような昨今の世界基準に合わせて、日本においても、生活にアートが当たり前にフィットし、アート自体の価値を高められるような取り組みをしていく。
「東急ステイ日本橋さんは海外のゲストの方が多いので、海外の方々に日本の若手アーティストの作品を見てもらい、(アーティストが)海外に進出するようなことも起きたらなと思っています」(宮内氏)
2月22日には、ライブペインティングを冠したオープニングレセプションも開催する。イベントは、ホテルを通常通り営業しながら実施し、一般客も内覧できるようにした。ライブペインティングはメインコンテンツとなるアーティストの渡辺明日香氏が描く。東急ステイ日本橋では客室内で、渡辺氏のアートとコラボした皿やマグカップを設置。客室でもアートに触れ、東急ステイの朝食などをアートとともに楽しめるようにした。
渡辺氏は小澤常務や宮内氏と「半年間、週2〜3回のペースで打ち合わせを重ねた」と明かす。
「初期の打ち合わせはブレインストーミングのような状態でいろいろなアイデアを相談しました。普通だったら『現実的に難しい』ということも起こり得るんですが、割と突飛なアイデアでも受け入れてくださいました。『やれるかもしれない。やれるように動いてみよう』というスタンスでずっといてくださったので、すごくやりやすかったです」
記者も屋外広告のデザインを展開するアオイネオン社(静岡市)に加え、アーティストのカワグチタクヤ氏、永田惇也氏、清水雄稀氏、つちもちしんじ氏が手掛けた全ての部屋を観覧した。久しく美術館に足を運んでいないが、もしホテルにアートがあれば、自然と世界観を感じられる。
特に日本では、芸術やアートはそれを体感できる場所に足を運ばない限り、接するハードルが高い。そんなアートと、生活との境界を溶かすのが今回の取り組みといえる。渡辺氏と、小澤常務や宮内氏が半年にわたって議論をしながら作り上げた取り組みが、ホテル業界やアート業界に一石を投じることになりそうだ。
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