世の中の機器のほとんどがソフトウェアなしでは動かない現在、ソフトが産業界のボトルネックになっているとまで言われる。しかし、ソフトはハードウェアと違って目に見えないため、プロジェクト管理が難しいと言われる。
B社は、ソフトの不具合が起きると人の命に関わる極めて重要な機器を開発・製造している。そのため、開発のボトルネックはハードではなくソフトになっていた。
実際、金曜日まで順調と報告されていたプロジェクトが、週明けの月曜日になって、大幅な納期遅れ、予算超過の可能性が報告されることも珍しくなかった。こうした事態を社内では、「開発爆発」と名付けていた。
一つひとつのソフトが絡み合い、製品の設計が複雑になる中、度重なる「開発爆発」が経営を圧迫していた。その結果、巨額の赤字を計上し、深刻な経営危機に陥っていた。
この状況を打開するため、PMO(Project Management Office)などが立ち上がり、プロジェクトマネジメントの専門家を育成しようとした。だが、状況はさらに悪化した。
PMOに対する現場からの進捗報告は増えるばかりで、PMOが設置されてから、上司は「Check」「Action」にばかりいそしむようになり、シーエー虫が大量発生した。現場では、余計な仕事が増え、仕事に集中できなくなったと不満が爆発し、私のもとに相談が寄せられた。
対策はまず、シーエー虫の存在を職場全員で認識することから始めた。チェックリストによる診断を実施し、シーエー虫が蔓延していることを職場全体が認識した上で、先ほどの3つの「質問」をすぐに実践することになった。
早速、夕礼で実施した。各職場の上司が部下に3つの質問をする、というシンプルな対策だが、つい「どれだけ進んだか?」というこれまで通りの質問をしてしまうことが少なくない。頭ではわかっていても、長年親しんだやり方が体に染み付いている。まるで、生活習慣のように、なかなか治らないものであることを全員が痛感した。
だが、うれしい援軍があった。PMOのトップが、プロジェクトマネジメントの本質は「変えられない過去」から「変えられる未来」に集中することだと気付いたのだ。過去のやり方が抜けない現場に対して、PMOが「クセになるまでやる」をスローガンにし、PMOメンバー全員が朝礼・夕礼で現場を支援することにしたのだ。
効果はてきめんだった。日々「3つの質問」をするだけで、シーエー虫に取りつかれた上司は「問題を拾い上げる上司」に変わり、手遅れになる前に手を打って現場を助けるようになった。
対策を始めて8週間後には、納期遅れを一掃するだけでなく3日前倒しで完了。現場メンバーは3日間のご褒美休暇をとることになった。
社員満足度も上がり、「会社に入って今が一番楽しい」という声さえ現場から聞かれるようになった。
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