設備の老朽化が進む「ローカル線」は、維持すべき交通システムか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)

» 2025年02月28日 09時09分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 いまや、ほとんどの地方鉄道が瀕死の状態で、補助金無しでは運行を継続できない。まるで点滴で延命する末期患者のようだ。いつまでも生き続けてほしいと願う人は多いけれど、ローカル線という患者はもはや点滴だけでは生きていけない。老朽化した設備の交換が必要だ。それは開業以来の大手術で、つまり補助金があっても足りない。

 このところ、そんな感想を持つ事例がいくつかあった。

弘南鉄道の場合

 青森県の「弘南鉄道」は、弘南線と大鰐線の2つの路線を運行している。このうち大鰐線について、2027年度末(2028年3月)に廃線にする方針だという。鉄道路線は廃止届を出せば1年後に廃止できるけれども、3年後とした理由は「電車通学を前提としてこの春に入学する中高生が卒業するまで」という配慮だった。潔く、そして優しい心遣いの結果だ。

 弘南鉄道は2013年にも大鰐線の廃止を表明した。その理由が「補助金を受けても赤字から脱却できず、従業員の昇給もできない。このまま補助金をいただき続けるのは心苦しい」というものだった。このときは沿線自治体が驚いて「支援を続けるから続けてほしい」と説得した。

 しかし、コロナ禍から赤字が増えており、ついに自治体が支えきれなくなった。経常収支の補てんが続いたとしても、今後、レールの交換など大規模な修繕が待っている。それを誰が負担できようか。残された弘南線も同じ課題が残っている。

弘南鉄道大鰐線、元東急電鉄の電車が活躍中(筆者撮影)
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