「バリューミュージカル研修」は2024年度で3回目となり、例年2泊3日で行われている。
3年目の社員たちは事前課題として『SUNDAY』を動画鑑賞し、自身のこれまでを振り返る。その後、研修所に集まると4〜5人のチームに割り振られ、事前課題をヒントに「私が終わる 私が始まる」をテーマとしたミュージカルを創って演じるというミッションに挑むのだ。
冒頭で紹介したのは、2日目の昼間に行われた「中間発表」の様子だ。そこで厳しいフィードバックを受け、筋書きを大きく見直し、せりふや表現のブラッシュアップなどをして「最終発表」を迎えるのである。
全体を通して指導をするのは音楽座のチーフプロデューサーの藤田将範さん、中間発表で容赦のないダメ出しをしていたのは同じくチーフプロデューサーで取締役の石川聖子さんで、各チームには、音楽座の舞台でメインキャストを務める役者が1人ずつトレーナーとして付く。音楽座が、決して片手間で研修事業をやっているのではないことが分かる布陣だ。
舞台に立つことが本業の俳優の方たちは、このような場に借り出されることが不本意ではないのだろうか? そんな疑問に、「ここに来ることは自分の研修にもなっており、貴重な機会だ」と答えてくれたのは安中淳也さん。これまで数々の作品で主役を務めてきたトップクラスの俳優だ。
「僕がここでやるのはティーチングやコーチングではなく、みんなと同じ時間を過ごし、どうしたら良いものができるのか共に悩み、一緒に創るということなんです」(安中さん)
参加者たちと一緒に悩むということが、なぜ自分の糧になるというのか。その意味が少し分かった気がしたのが、2人のチーフプロデューサー、藤田さんと石川さんによるトークの時間だった。そこでは、石川さんがなぜミュージカルを創る仕事に携わるようになり会社の取締役にまで上り詰めたのかが、具体的なエピソードや心情とともに赤裸々に語られ、音楽座が普段どのようにミュージカルを創作しているのかが紹介された。
筆者は一般的なミュージカルの創り方について詳しいわけではないが、2人の話を聞くと、音楽座のやり方はかなり独特なもののように思えた。
例えば『SUNDAY』は、アガサ・クリスティが別名で書いた『春にして君を離れ』という小説が元になっている。音楽座のメンバーがミュージカルにしたい本を持ち寄った中で、石川さんが推した本作が選ばれたのだそう。しかし、音楽座の脚本は原作を忠実になぞるようなものではない。メンバーそれぞれが自分自身の経験、特に心に痛みが残っているような経験を語り合いながら、自分たちの姿を作品に投影させていくのだという。
石川さんは、研修参加者に対して何度も「本当のことでないと、観客の心を動かすことはできない」と繰り返していた。自分の内面の、できれば目をそらしたいような部分もとことん見つめ、それを他者にさらけだす覚悟がなければ、人の心に訴えかけるミュージカルはできないと断言する。
このような考え方が音楽座に根付いているのだとすれば、「一緒に悩むことが自分にとっての学びになる」という安中さんの言葉も理解できる。
研修であっても、人の心を動かすミュージカルを創るには、参加者それぞれの「本当の経験や思い」が反映されたものでなければならない。そのためには各自が自分を深掘りし、チームメンバーに開示することが必要だ。そのような場に一緒にいてそれぞれの経験を追体験することは、役者として得るものが大きいということなのだろう。
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