マスク氏が受けているビジネス面での反発は、サイバー攻撃にとどまらない。実は、それ以外でもかなりのダメージを食らっている。
例えば、テスラだ。全米各地のテスラの店舗でデモが起き、オレゴン州では販売店のガラスが破られる事態に。SNSでも不買活動が起き、マサチューセッツ州のテスラの充電ステーションに火を付けられたほか、コロラド州では販売店の看板に「ナチス」と落書きをしたとして逮捕者が出ている。別の販売店では、駐車場に火炎瓶が投げ込まれた。トランプ政権におけるマスク氏の役割が、抗議と暴力の標的となっている。
なぜマスク氏が米国内で反感を買っているかというと、トランプ政権のスージー・ワイルズ首席補佐官の下に設けられたタスクフォース「政府効率化省(通称DOGE=ドージ)」を彼が率いているからだ。
DOGEは、政府の支出を2兆ドル減らすために無駄を削ることを目指している(後に目標金額は下げている)。USAID(国際開発庁)や教育省といった連邦機関の閉鎖を目指し、連邦機関全体ですでに職員6万2000人以上の解雇を実施したほか、多くの職員に早期退職を促している。そこにがっつりと関わっているマスク氏が、連邦職員や反トランプ勢力などから恨みを買うのは当然だといえる。
筆者は先日、米国の首都ワシントンに出張し、レンタカーでテスラを借りていた。アンチ・テスラが起きているのを分かっていてあえて借りてみたのだが、ある日の取材でホワイトハウス近くのパーキングメーターが設置されている場所に駐車していたら、駐車時間を超えて5分ほどで駐禁チケットを切られた。
筆者のテスラの前後に止まっていたトヨタとホンダの乗用車も同じように駐車時間を超えていたが、駐禁切符は切られていなかった。特にワシントン周辺の連邦職員が大量に解雇されているので、テスラが狙い撃ちにされている――というのも決して行き過ぎた解釈ではないだろう。
マスク氏は、Xやテスラだけでなく、宇宙開発企業スペースXなども経営している。トランプ政権に関わることで、全てのビジネスにネガティブな影響が及んでいる。株価を見ても、テスラ株が大きく下落しており、マスク氏の資産も1020億ドル(約15兆円)が吹っ飛んだ計算になる。トランプ政権に深く関わったことが影響しているのは、間違いないと見られている。
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