メンタル不調の従来の主要因は「仕事の大変さ」と「上司との関係」であり、長時間労働規制やパワハラ対策で取り組みが進んできた。
しかし20代のメンタル不調増加の背景には、見落とされてきた新たな要因がある。パーソル総合研究所の調査では、若手特有の「今日的なストレス要因」として「テクノストレス」と「拒否・失敗回避志向」の2点が浮かび上がっている。
「テクノストレス」で特に注目すべきは「スクリーンタイム」と「オンラインコミュニケーションによる疎外感」だ。若い世代ほどスクリーンタイムが長く、20代では休日に液晶端末を5時間以上利用する人が約半数に達する。
調査では、スクリーンタイムの長時間化に比例してメンタル症状(不安感、イライラ感、憂鬱感)や脳疲労、眼精疲労が高まることが判明。週52時間以上スクリーンに触れる人の不安感は、週17時間以下の人と比べて1.6倍に達している。20代では長時間利用者が多く、これがメンタル不調の一因となっている可能性がある。
もう一つの注目点はテレワークの影響だ。20代はテレワーク頻度が増えるほど孤独感やストレス反応が高まる傾向があるのに対し、30代以上ではそのような傾向は見られない。若手は周囲からのフィードバックや交流を求める傾向が強く、またアイデンティティー形成の途上にあることから、対面でのコミュニケーション不足がメンタル面に大きな影響を与えているものと考えられる。
また「拒否・失敗回避志向」についての調査では、若い世代ほど「人目を気にする」「褒めて育ててほしい」「批判的な人との関わりを避ける」傾向が強いことが判明。「マニュアル的に成長したい」「失敗を恐れる」という受け身の姿勢も20代で顕著だ。
こうした背景には、世代間の育った環境の違いも関係しているという。20代は「保護的な環境で育った」「弱音を吐けば誰かが助けてくれた」と答える割合が高く、「すぐネットで調べていた」「自分で考える経験が少なかった」という回答も多い。このような環境で育った世代は「拒否・失敗回避思考」が強まる傾向がある。
拒否・失敗回避思考の傾向が高い若手は、上司からの叱責に対してストレス反応が大きく高まるという。「育てたいから怒る」「成長してほしいから叱る」といった考え方を理解できない若者にとっては、こうしたコミュニケーションはストレス反応が高まる要因となる。
何より成長研究によれば、感情的に怒ることは成長促進に効果的でなく、長期的にはモチベーション低下を招くという結果に。むしろ適切な業務分担やフィードバックの方が重要で、そのような環境下では若手もストレスなく成長を実感できるという。結論、叱責は不要であり、もしも、こうした考え方や対応があるようならアップデートしたほうがいいだろう。
企業のメンタルヘルス対策は進んでいるにもかかわらず、若手の不調が増加している原因は、これまで見落とされてきた新たなストレス要因にある。金本氏は「テクノストレスや世代間の価値観の違いなど、現代特有の原因が見過ごされているため、従来の対策ではコストをかけても効果が得られない状況が続いている」と指摘する。
調査結果から導き出された効果的な対策は3つ。
(1)一般従業員への「相談後の対応や評価への影響」についての正確な情報提供
(2)テクノストレス対策としてのスクリーンタイム影響の啓発とテレワーク下でのチームビルディング強化
(3)失敗を恐れる若手に対する効果的な指導法の管理職教育
若手人材の採用・定着が難しくなる中、こうしたメンタルヘルス対策はビジネス上の重要な戦略となっている。
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