企業のメンタルヘルス対策は進みつつあるにもかかわらず、若手従業員のメンタル不調は増加傾向にある。パーソル総合研究所が実施した調査によると、20代の5人に1人が過去3年以内にメンタル不調を経験し、多くが離職にまで至っていることが明らかになった。
若年層のメンタルヘルスは近年の急速な社会変化やデジタル環境の広がりの影響を受けており、従来とは異なるストレス要因が浮かび上がっている。同研究所の研究員である金本麻里氏による発表から、現代の若者特有の要因と、管理職と若手の間の「知識・認識ギャップ」が見えてきた。
相談すれば改善する確率が高いのに、なぜ若手は相談できないのか。その構造的問題と対応策を探る。
ストレスチェック義務化やパワハラ防止法など、企業のメンタルヘルス対策は過去10年間で大きく進展した。しかし、その効果については疑問符が付く。厚生労働省の労働安全衛生調査によれば、メンタル不調による休職者がいた事業所割合は増加傾向にあり、2022年のデータでは10.6%に達している。
年代別の傾向に注目すると、2022年の調査においてメンタル不調による欠勤・休職者の増加が目立つ年代として「20代」を挙げる企業が64.4%に上り、30代の44.2%を大きく上回っている。10年ほど前は30代、特に男性の不調が多いと言われていたが、若年化が進んでいることが分かる。
また、パーソル総合研究所の調査によると、20代正規雇用者の中でメンタル不調を経験した割合は男性で18.5%、女性では23.3%に達し、正規雇用者の5人に1人が過去3年以内に「日常生活困難レベル」のメンタル不調を経験していることになる。
さらに20代のメンタル不調者の約4割が離職しており、そして休職した場合は約6割が最終的に退職に至っている。
メンタル不調で退職する若手の半数以上が職場にその理由を伝えずに去っていくという。つまり、企業が把握しているメンタル不調による離職者数は、実際の半数程度に過ぎない可能性がある。
このような状況下で疑問として浮かぶのは、「多くの企業がメンタル対策をしているにもかかわらず、なぜ不調者が減らないのか」「なぜ特に若手の不調が増えているのか」という点だ。
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