新時代セールスの教科書

“残念”な自己紹介をどう防ぐ? 日常生活で鍛えられる3つのスキル

» 2025年04月07日 07時00分 公開
[日野眞明ITmedia]

この記事は、『はじめまして売れる『伝え方』のぜんぶです 新発見!お客様の反応が変わる58秒』(日野眞明著、三恵社)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


 自己紹介とは何か。それは自分を他人に「瞬時に」知ってもらう手段です。

 「瞬時に」というところがミソです。近所の友達や学校のクラスメイト、仕事や遊びの仲間なら、活動を通して少しずつ知ってもらうことができます。でも自己紹介はちがいます。会合やパーティの席上なら限られた時間内──―つまり瞬時に「私とは誰か」を知ってもらわなければならないからです。

 それには事前に準備が必要です。

瞬時に「私とは誰か」を伝える方法とは?

 まずはその集まりにはどんな人たちが多く、何のために集まり、何に関心があり、何を心配しているのかをちゃんと把握しておかなければなりません。子どもが通う学校の保護者会で、いきなりゴルフのアベレージの話をしてはいけないし、ゴルフコンペの打上げで子育ての悩みを打ち明けてはいけないのです。

 次に「私」の情報を整理しなければなりません。「私とは誰か」です。自分では自分のことを案外分かっていないものです。最後に整理した情報を表現する、短く分かりやすい言葉を見つけておかなければなりません。それらをこの集まりの中で生かすにはどうすればいいのか考えるのです。

 この一連の準備が「お客様の立場に立つ」「お客様を知る」のトレーニングになります。

 そして、ここが肝心なのですが、その集まりを有意義なものにしたい、参加したみなさんと幸せな時間を分かち合いたい、というように、他の参加者と集まりを好きにならなければいけません。自己紹介には「すばらしい機会を与えていただいて感謝しています」という気持ちを携えて臨まなければならないのです。

 「本当は来たくなかった」 「代理で仕方なく来た」という人の自己紹介に誰が耳を傾けるでしょうか。好きになる心だって筋肉のようにトレーニングでポンプアップできるのです。

自己紹介が「商売繁盛」に結び付く これだけの理由

 さて、この自己紹介がなぜ商売繁盛と結び付くのか。

写真はイメージ、ゲッティイメージズより

 例えば、みなさんのお店の前を、誰かが通りがかった場面を想像してみましょう。もし何のお店か分からなければ、その人は店の前を通り過ぎてしまいます。たとえその人はとてもお腹が空いており、みなさんのお店が食堂であったとしても、です。

 また運よくお店に入ったとしても、何の工夫もないメニュー表ならどうでしょう。店主自慢の手打ちそばではなく、片手間に作っている親子丼を注文しても不思議ではありません。その結果「あそこの店はまずい」と悪い評判を立てられてしまうかもしれません。

 SNS時代にあっては、これは致命傷です。

 しかしこの場合、悪い評判を広めたお客さまに罪はありません。たまたまお腹が空いており、たまたま目についた店に入り、その時食べたかった親子丼を注文しただけなのですから。

 非は全面的にお店側にあります。何がいけないか分かりますか?

 お店もそばも、自己紹介していないのです。例えば「お店」の自己紹介。

  • 「私は食堂です」
  • 「こちらのドアからお入りください」
  • 「おすすめは日本そば。店主が心を込めて打っています」

 例えば「そば」の自己紹介。

  • 「へい、いらっしゃい。私が日本そばです」
  • 「そばは信州戸隠産の十割そば。汁は江戸前できりっとからい」
  • 「そばで物足りないなら丼ものを付けられます。単品も承ります」

 店構えもメニュー表も、私が何者かということを示しているのです。しかも中身が「瞬時」に伝わらなければなりません。これが自己紹介でなくて何でしょうか。

 自己紹介トレーニングが有益なのは、お客さまへアピールする場面だけではありません。商売全体に好影響を与えてくれます。よい自己紹介を練りあげていく過程で、商売に必要な、

  • インプット
  • 検討・分析
  • アウトプット

 という3つのスキルに、磨きをかけることができるからです。応用分野は広告宣伝にとどまりません。販売から商品開発まで、商売に関するあらゆる局面で威力を発揮します。およそ商売繁盛に必要な能力を鍛えることができるのです。しかも簡単で手軽で誰にでもできます。

 その結果、商売繁盛の果実がみなさんの手に落ちてくる。こんなにいいものがあるでしょうか、と自画自賛してしまいます。

筆者プロフィール:日野眞明  MORE経営コンサルティング 代表取締役

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名古屋商科大学大学院客員教授。愛知県生まれ。年間宿泊出張を100泊近くする“移動の達人”。

中央大学経済学部国際経済学科卒業後、イトーヨーカ堂を経て、名古屋商科大学大学院経営情報学研究科修了、MBA。

“商売繁盛 ”を応援することが大好きなマーケティング経営コンサルタント。著書には「ふせん1枚から始める『事業計画』」「脳を揺さぶるマーケティング読本」がある。


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