ウォルマート、セブン、トライアル……小売業の「AI活用」を有名企業の事例に学ぶ(4/4 ページ)

» 2025年04月21日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]
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トライアルの「AI活用」は何がスゴいのか

 最近、トライアルが西友の子会社化を発表して話題になりました。トライアルの決済機能付きショッピングカート「Skip Cart」は、AIを活用しながら利用者への提供価値を高めている好例です。

 Skip Cartは200店舗以上に導入しており、月間延べ利用人数が450万人を超える、タブレットとスキャナを装着したショッピングカートです。あらかじめチャージを済ませた同社の決済アプリやプリペイドカードをスキャンし、購入したい商品のバーコードを読み取りながらカートに入れていき、専用ゲートを通過すると決済が完了する仕組みです。

 Skip Cartでは、カートに入っている商品の合計金額や、関連する「おすすめ商品」、利用可能なクーポンなどを表示する機能を搭載しています。利用者の属性や購買履歴に合わせて最適な商品レコメンドをAIが行っており、利用者視点では買い物をしながら新たな商品に気付く体験価値が増大するとともに、決済にかかる時間を短縮。店舗側にとっても、レジ待ち列の解消やレジ人員の削減といった効果を期待できます。Skip Cartの利用率や利用層と未利用層の購買単価、買い合わせ点数などを比較して効果検証も可能でしょう。

 このように、AIを単なるツール導入ではなく顧客と自社のメリット、目的を明確にした全体像の中で適切に活用するという流れが理想です。AIの活用が当たり前となってきている今だからこそ、効果を最大化させるための全体像、目的を的確に描いて戦略を実行すると良いでしょう。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

著者プロフィール

佐久間俊一(さくま しゅんいち)

レノン株式会社 代表取締役 CEO

城北宣広株式会社(広告業)社外取締役

著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。

グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。

2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。

2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。

日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。


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