では、なぜ今「紅茶」なのか。
コンビニとカフェチェーンではそれぞれ事情が異なるものの、両者に共通するのは「市場の飽和」である。
まずはコンビニ。このところ、コンビニの売上高は微減傾向が続いており、市場の飽和が見えている。この背景にはフランチャイズオーナーによる争議が頻発して、本部も無茶な出店を控えざるを得なくなったことがある。流通アナリストの中井彰人氏は「最近は日販の向上に依存した成長に頼っているのが現状である」と言う。
そうであるならば、これまでとは異なる商品やサービスを取り入れ、顧客の来店回数や一度での消費額を増やすしかない。セブンは紅茶以外にも、焼きたてのパンなどもレジ横商品として拡充していく予定であり、紅茶と合わせて購入することが見込まれている。
カフェチェーンも同様である。
日本国内の喫茶店市場はここ20年ほど、ほぼ横ばいの状態が続いている。1999年度が1.2兆円で2008年度が1.04兆円、そしてコロナ禍が明けた2023年度が1.18兆円と、だいたい1兆円あたりをうろついている状況だ。
一方で、1981年以降は喫茶店全体の数は減少を続けているというデータもある。おそらく小規模な個人経営店が減り、それよりも広めの商圏を持つカフェチェーンが台頭してきているのが現状だろう。いずれにしても横ばいの市場規模の中で顧客を食い合っている状態で、「紅茶」という選択肢が出てきたものと思われる。
ただ、市場を拡大したいだけなら、紅茶でなくても良いはずだ。しかし、紅茶は市場拡大にちょうど良かった。
セブン-イレブン・ジャパンのマーチャンダイザー櫻井宏子氏はインタビューに対し「コーヒーが苦手な人が多数いるほか、若い女性の間で紅茶が流行っており、ホテルなどのアフタヌーンティーを楽しむ活動『ヌン活』をする人も増えている」と述べている。
実際、2024年7月のマイボイスコムの調査では「コーヒーを全く飲まない」と答えた人は10%。1割はコーヒーを飲まない、あるいは飲めないのだ。しかも、同じマイボイスコムの2012年の調査によれば、この数値は5.6%だったので、年々増えている。このままいけば、やや大げさな言い方かもしれないが、「コーヒー離れ」がさらに進む可能性もある。そして、「ティー」の需要が高まるのである。
「ヌン活」人気も継続中だ。この言葉は2022年に新語・流行語大賞にノミネートされたが、いまだに都内を中心としたホテルではアフタヌーンティーの需要があるという。ある程度高価でも、友人などとゆったり時間を過ごしたい需要があるからだろうが、特にコンビニやカフェのティーで少しライトな「ヌン活」を……という層もいるはずだ。
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