もっとも、関税に報復すれば、さらなる報復が待っているし、ぐっとこらえて報復しなかったとしても関税は消えない。トランプ政権側の思惑は、各国からの要請で話し合いに持ち込めば、関税に困っている相手から「お願いされる」立場で交渉の席につける。トランプ流のディールで言えば、優位な立場で交渉に臨める。
にもかかわらず、ベッセント財務長官を無視して報復関税を発表したのは、世界で中国だけだった。そしてトランプ政権は各国との交渉のために90日の関税猶予を発表したが、報復した中国には追加の関税を発表した。
その後中国は、米国の追加課税に合わせて、34%→84%と米国製品への関税を高めていき、現在は米国が中国からの輸入に145%の関税を課し、中国は米国からの輸入に125%の課税をするところまで来ている。ここまで来れば、あとは関税が200%や500%になっても大きな違いはないだろう。
ちなみにトランプ流の交渉術は「マッドマン・セオリー」(まず異常な要求や発言で相手を怯ませてから交渉に入る)であるといえるが、彼の交渉のポイントは次の3点だ。「非常に攻撃的な要求から始め、交渉の初期条件を設定」「予測不能性を見せ、相手を不安にさせる」「交渉は勝つか負けるかで臨む」
米中交渉に話を戻すと、ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、米当局は70カ国以上に対して、米国の関税から逃れるために中国が自国製品を迂回(うかい)しないよう確認し、中国の安価な工業製品を受け入れないよう要請する予定だという。トランプ政権は完全なデカップリング(経済的な分断)を狙っており、日本政府関係者は「日本も対象になる可能性が高い」と戦々恐々としている。
日本発の「夢の電池」はどこへ? 日本の技術がどんどん流出する理由
炎上、ボイコット、株価急落――それでもイーロン・マスクはなぜ政治に関与するのか
DeepSeekが中国系サービスと結びつく? 広がる“データ網”の恐怖
TikTokは存続できるのか? 米中対立が引き起こす巨大プラットフォームの試練
大阪・関西万博に忍び寄る“デジタルの影” サイバー攻撃は開幕前から始まっていたCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング