業績的には売り上げが上がっていれば問題ないともいえるし、値上げ自体は現時点では成功しているともいえる。ただし、今後も客数の減少が続けば、次期の減収要因となりかねない危険をはらんでいる。
客商売において、来店してもらうことのハードルは非常に高い。当然ながら、店に来てもらえなければ単価で補うこともできない。筆者が懸念しているのは、物価上昇を背景に実質賃金のマイナスが続き、消費者の財布のひもがかなり固くなってきていることだ。
消費者にとって、食品やエネルギー(水道光熱費・燃料費)への支出は削ることが難しいが、外食への支出の優先順位は相対的に低い。外食への予算配分が減少しつつある兆しと捉えるならば、業界としては見過ごしてはならない。
実質賃金(賃金上昇−物価上昇)の定例支給分に関しては、ここ数年ずっとマイナスで推移している。大企業を中心に賃上げが進んだことでマイナス幅は縮小傾向にあるが、中小企業勤務者に関しては依然として水面下から浮上していない(図表4)。数年間続いているその累積を考えると、消費者の財布はコロナ前に比べてかなり目減りしているのが実態だ。
最近、消費者のエンゲル係数が急上昇していると報じられることがある。ただし、このエンゲル係数に関しては、所得階層によって二極化が進んでいるという事実は、あまり報道されていない。
図表5は、家計調査データから、所得の高い層と低い層の世帯支出に占める食品購入額の割合(≒エンゲル係数)の推移を示したものである。直近1年を見るだけでも、所得の少ない世帯の逼迫ぶりがよく分かる。
大企業勤務者などの高所得層では賃上げが進み、負担増がある程度抑えられているが、賃上げの恩恵が及ばない中小企業勤務者らの負担はもともと高い上に、さらに加速している。今後もこの差は広がる見通しだ。中小企業では価格転嫁交渉がようやく始まった段階であり、賃上げはそのさらに先にあると考えれば自明である。
こうした状況下で、支出優先度の高くない外食需要に対しては、今後、消費者の財布の二極化を意識した対応がこれまで以上に求められてくる。
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