なぜニトリばかりが売れるのか? 見えないライバルたちを引き離す仕組み小売ビジネス(3/3 ページ)

» 2025年05月09日 08時00分 公開
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小売ビジネス』(中井彰人、中川朗/クロスメディア・パブリッシング)

 しかし、この取引形態は、問屋に高いリスク(倒産リスク、返品リスクなど)と、在庫コスト(金利負担、物流コストなど)の負担が発生しますので、かなりのリスク料金が価格にオンされていました。それらのリスク、コストを物流効率化とITによって削減し、価格に還元したため、ニトリ商品は「お、ねだん以上」と公言できるのです。

 もうひとつ、重要なポイントは、ニトリの1階売場にあります。ニトリは1階に、インテリアだけではなく、キッチン、バス、トイレタリー、寝具関連など、家の中で使うあらゆる雑貨類を、色彩にも統一感のある自社製品でコスパ高く取り揃えました。これにより、ニトリへの女性客の来店頻度は月に数回程度となりました。

 このことで、年に数回しか行く用のないライバル家具店は、家具購入の際の選択肢に入らなくなったのです。あまり知られていませんが、ニトリが圧倒的なシェアになった根源は、この来店頻度がミソだったのです。

著者プロフィール:

中井彰人(なかい・あきひと)

(株)nakaja lab 代表取締役/中小企業診断士

 早稲田大学法学部卒業。みずほ銀行産業調査部退職後、2016年独立。流通アナリストとして活動中。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務めつつ、新聞社、テレビ局、出版社などマスコミ各社に寄稿、知見提供、出演多数。東洋経済オンライン、プレジデントオンライン、ダイヤモンドDCS、新潮フォーサイト、ITmediaなどにて月刊連載中。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウェーブ賞)受賞。著書として『図解即戦力 小売業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社 2021)がある。

中川朗(なかがわ・あきら)

デロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社DTFA Institute主任研究員

 大阪大学大学院文学研究科文化表現論修了。シンクタンク、金融機関などで産業調査・国内消費の分析業務に従事。みずほ銀行産業調査部では小売・消費財産業のアナリストとしてサブセクターヘッドを担う。北海道から沖縄、海外は韓国・香港まで幅広く、大手流通や専門店、卸、EC、テック企業を調査。消費の構造変化と企業戦略について産業調査レポート・記事を執筆。2025年5月設立されるデロイトトーマツ戦略研究所に参画予定。


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