アクティブステアリング(ステアリングホイールと操舵機構が物理的に連結していない操舵装置)に代表される、自動運転のためのデバイスやシステムは、確実な動作が要求されるため、高い信頼性と非常時の安全性の確保が必要となる。
電源やモーターなどの回路も並列で2つ備えるのは、故障時でも作動を担保するためで、冗長性によって万が一に備えているのだ。それだけの余裕があっても、100%確実とは言えないのが電子制御であり、複雑な機械なのだ。
ホンダはかつて、レベル3の自動運転を含む運転支援システム「ホンダセンシングエリート」をレジェンドに搭載し、100台限定でリース販売した。当時、レベル3の自動運転の最高速度は時速60キロに制限されていたが、ホンダはあえて時速50キロにとどめていた。
ホンダセンシングエリートを搭載したレジェンドを試乗中の筆者。トラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)という名称の通り、主に高速道路の渋滞中にドライバーに代わって運転してくれるシステムで、機能を限定することで安全性と信頼性を高めていた(筆者撮影)中国や米国、ドイツなどは自動運転の開発競争が激しく、レベル3での高速走行も実現している。日本も法改正し、レベル3の最高速度を引き上げたが、これはWP29(自動車基準調和世界フォーラム)の自動運転分科会で、日本の提案が合意されたことを受けてのものだ。
メルセデス・ベンツは2024年末、レベル3の最高速度を時速95キロまで引き上げると発表したが、これはアウトバーンという充実した高速道路網を持つことが背景にある。しかもレベル3の自動運転は、システムに問題が発生した場合、ドライバーに運転の主権が移譲される。つまり最終的に運転操作の責任はドライバーに課せられる。
自動運転中でも走行中の責任はドライバーにあるとされる以上、走行中にセカンドタスク(読書や映画鑑賞など運転以外の行為)が許されても、常に周囲の状況や車両の状態を把握する必要がある。
だが、冒頭のXiaomiの事故などを振り返れば、高速走行時にいきなり運転を任されるのは、ドライバーにとってハードルが高い。だからホンダは時速50キロにとどめていたのであり(といってもホンダも最高速度の引き上げを表明している)、それを体験した筆者はその仕様を「ドライバーに向けてのホンダの配慮」だと感じた。
そのように自動車メーカーが長年培ってきた知見は、車体のメカニズムや使い勝手だけでなく、隅々の仕様にまで及ぶ。EVはノウハウが少なく、自動運転技術さえ手に入れれば高度な自動運転EVが出来上がると思われているが、XiaomiのEVは冒頭の事故以外にもいろいろと問題を起こしており、これまでのクルマと同じように信頼し切って運転することはリスクが高いと思った方がいい。
まだ日本に上陸していないが、他の中国メーカー製EVでも同じことは起こり得る。3年、5年経過後の故障率の高さが近年問題視されるドイツ車では、自動運転システムも経年劣化により動作が不安定になる可能性がある。
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