CCCが運営する蔦屋書店事業には、蔦屋書店とツタヤブックストアの2ブランドがある。蔦屋書店は地域ごとのオーダーメイド設計で、投資コストが高く、工芸品などの高額商品も扱う。一方、ツタヤブックストアは空間価値を維持しながらの横展開が可能で、商業施設などに導入しやすい設計だ。新規の加盟企業でもコストを抑制して出店できる。
海外展開においてCCCが重要視するのは、地域特性を考慮した戦略だ。そのため直営ではなくフランチャイズ展開で、社員は現地採用している。
アジア太平洋への出店は、2012年の台湾から始まった。当時は、台湾の映像パッケージレンタル・販売チェーンの大手「亞藝影音」(ヤイインイン)との事業提携により、亞藝影音の店舗をTSUTAYAにリニューアルおよび新規出店の計画を進めていた。しかし、動画コンテンツの台頭などデジタル化の波により戦略をシフト。
ツタヤブックストアの出店に舵(かじ)を切り、2017年以降、台北、桃園、台中、高雄など一等地への出店を重ねる。2025年5月時点で、同国のメインエリアである西側に12店舗を展開。今後は、人流が少なく商業が難しいと言われる東側にも出店を拡大する見込みだ。
2020年には中国に進出。ブランディング強化を目的に、1級都市にまず1店舗を出店する計画を進めてきた。1号店は「杭州天目里(クイシュウ・テンムウリ) 蔦屋書店」で、世界的建築家のレンゾ・ピアノ氏がプロデュースした商業施設「天目里」内に開業したため、非常に注目を集めたという。
続いて、上海に2店舗の蔦屋書店を出店。さらにツタヤブックストアの出店も進め、2025年5月時点で12店舗(蔦屋書店3、ツタヤブックストア9)を展開する。
「台湾・中国のメインユーザーは20〜30代の若年層で、両国とも書籍市場は縮小しているものの、日本のIP商材、特にアニメ商材が非常に好調です。一等地に出店を重ねたことで、現地での『ツタヤ』のブランド認知が進んでいます。台湾では約160〜500坪のさまざまなサイズの店舗を構え、中国では約500〜700坪のパッケージを広げています」(橋本氏)
中国ではコロナ禍に出店を重ねた影響で、これまでに3店舗を閉店している。フランチャイズオーナーの多くが商業施設のデベロッパーで、施設全体の営業不振から閉店を余儀なくされたケースが多い。そうしたケースを除けば、順調に拡大しているそうだ。
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