さて、このような話を聞くと、「フランチャイジーに見切られるなんて天一には将来性がないということか」と思う人も多いかもしれないが、そんなことはない。これまで天下一品は店舗が多すぎることで「付加価値」を低下させていた面もある。これを改善すれば、まだまだ成長できるはずだ。
食事が提供する付加価値と、店舗数は関係がない。むしろ、いたずらに拡大戦略を進めることが付加価値を落としてしまう。それを筆者は2018年、「一蘭」の代表取締役社長・吉冨学氏にインタビューした際、そのことを実感した。
当時、一蘭は外国人観光客の間で大バズりし、人気を博していた。このとき、全国77店舗(2018年4月現在)だったので、筆者はこれからどんどん店舗を増やしていくのか尋ねた。しかし、意外なことに吉冨社長は国内では店舗数を増やしていくような「拡大戦略」はとらないと答えた。その代わりに、ラーメンや接客の質を上げていく、つまり付加価値向上に注力をすると宣言し、こんなことをおっしゃった。
「中身と外見があるとすれば、必ず中身のほうが外見をちょっとだけでも上回っていなければいけない。例えば、アルマーニのような高級スーツを着ている人が脱いでガリガリだとガッカリしますが、ユニクロを着ている人が脱いでムキムキだったらカッコイイと思うものです。これは商売全てにあてはまり、外でうたっていることより、中身が少し上回っていれば満足度は上がる。これは生産性を上げる秘けつでもあると思います」
飲食店における“外見”には、「店舗数」も含まれる。全国200店舗や1000店舗をうたうチェーン店に対して、消費者は「それだけうまいのか」と思う。しかし、実際に食べてガックリということも少なくない。
一方、店舗数はそれほど多くなく、知名度もそんなに高くないチェーン店の場合、期待値もそれほど高くないので、食べてうまいと感じたらその分、満足度がガツンと上がる。「有名じゃないけど美味かった」「また行きたい」などの口コミも増える。
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