しかし、社会の前提は大きく変わってきています。少子化が進み、人口は一転して年々減少傾向です。会社は慢性的な人手不足に直面しています。
さらに考え方や価値観の多様化が進んで、男性が働き女性は家庭を守る、といった性別役割分業意識は少しずつ薄れてきました。専業主婦家庭は減り、いまや夫婦共働き世帯の方が多数派です。
職業キャリアは男性だけに大切とされるものではなくなり、総合職として働く女性も増えました。家事や育児、介護といった家オペレーションについても、夫婦が共に協力して主体的に取り組む「一億総しゅふ化」が進む方向へと舵が切られつつあります。
これまで男性だけが仕事に100%の時間を費やすことができた状況こそ特殊だったと、社会は気付き始めました。
このように社会構造の土台が変化すると、ワークスタイルの標準形も変化していかざるを得ません。性別に関係なく、誰もが家庭の事情などで勤務条件を調整したり、育児休業を取得したりするようになると、従来のような一律の制度では対応しきれなくなります。
年功序列など会社側が定めた型に社員の方が合わせるのではなく、会社の方が社員の事情に応じて個別最適化したワークスタイルを提示する必要性が高まってきているのです。
そのため、雇用する側の難易度は大きく上がったと言えます。社員側もより良い職場を求めて社外に目を向ける機会が増え、社内環境と希望とのギャップを感じやすくなってきています。
かつてのように、一度入社した会社で定年まで勤め上げる前提の社員と会社の関係性は、「一択心中型」と表現できるかもしれません。一択心中型の職場では、不満を感じることがあっても我慢するのが正しく、退職は辛抱が足りない者がすることであり、転職は裏切りと見なされがちです。定年まで音を上げずに会社に残り続けることこそが、良い人生を送るための典型的な勝ちパターンでした。
しかし、誰もが柔軟な働き方を求めたり、仕事と家庭の両立に取り組んだりするようになれば、合わない環境で無理して残り続けるより、自分にとって最適な職場を探し出して転職した方がより良い人生を送りやすくなります。
こうした前提の変化により、会社は「一度入社したらずっと所属する場所」から、「自身の志向によって、何度も選び直す可能性のある場所」へと変化してきているのです。
その是非は別として、冒頭で紹介したように入社後すぐ転職サービスに登録したり、退職代行を利用したりする新卒社員の動きには、先輩社員たちと会社との関係性の変化を敏感に感じとっている様子が如実に表れていると感じます。
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