2024年の年末年始は、12月28日から1月5日まで9連休という人も多いのではないでしょうか。
他方、スマホやメールで常時、連絡がとれる現在は、職場を離れても仕事とのつながりが断てずプライベートとの切り替えが難しくなった感もあります。休日など勤務時間外に職場から受ける連絡は気分のよいものではありません。
そこで取り沙汰されるのが「つながらない権利」の必要性です。
勤務時間外に働き手が職場からの連絡を遮断・拒否できることをいい、海外ではフランスやイタリアなどで法制化。2024年8月にはオーストラリアでも施行されました。
日本でもつながらない権利を法制化すれば、“休日対応”を迫られる人々の悩みは解消されるか、というと、当然ながら問題はそう単純ではありません。企業と働き手の双方にとってベストな「つながらない権利」の形は、いかにして可能なのでしょうか。
ワークスタイル研究家/しゅふJOB総研 研究顧問/4児の父・兼業主夫
愛知大学文学部卒業。雇用労働分野に20年以上携わり、人材サービス企業、業界専門誌『月刊人材ビジネス』他で事業責任者・経営企画・人事・広報部門等の役員・管理職を歴任。
所長として立ち上げた調査機関『しゅふJOB総研』では、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ5万人以上の声をレポート。
NHK「あさイチ」他メディア出演多数。
スマホが行き渡り、常時つながる状態になったのは世界共通です。これは、テクノロジーの進化によって生み出された変化であり、同時につながらない権利もまた世界共通の課題といえます。
一方で、ワークライフバランスが推奨され、働き方改革も進められてきています。仕事と休息のバランスが大切にされるようになったにもかかわらず、常時つながっている社会が構築されたことで、仕事から完全には解放されないという矛盾した状態が生まれてしまったことになります。
かつて、昭和から平成にかけて企業戦士たちが「24時間戦えますか?」などと鼓舞された時代でも、会社から一歩外に出れば社員は自ずと仕事から切り離されました。いまは会社とのつながりを切ろうにも切れない点において、モーレツ労働が求められた時代以上の束縛が生じているともいえます。
勤務時間外も業務対応に追われ、心身の健康が損なわれてしまっては、労働契約法や労働安全衛生法によって定められている安全配慮義務の観点から望ましくありません。つながらない権利が法制化されていない現状であっても、会社側は一定の責任を負っています。
また、社員側は基本的に勤務時間外の労働義務は発生しませんし、仕事とのつながりを完全に遮断してしまうと不便なこともあります。例えば、緊急対応が必要で勤務時間外であっても連絡がとれないとその後の仕事にも支障が出るような場合や、休み明けの仕事をスムーズに開始するためにメールなどをチェックしておきたいなど事情はさまざまです。
それらを踏まえると、つながらない権利が求められているのは、必ずしもつながり自体の遮断が目的とは限りません。勤務時間外に受けた職場からの連絡を確認するか否か、また返信するかといったアクションなどについて、社員自身の裁量と意思で決められるよう「レスポンス主導権」を認めることを意味している面もありそうです。
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