ただし、こうした環境変化は、私たち労働者にとっては必ずしも悪い話ではないとも思える。
そもそも、外食チェーンの経営理論は物販チェーンと同様に「チェーンストア理論」を基礎に構築されており、集中化・標準化・マニュアル化をベースに店舗数を拡大することで、収益を極大化するという考え方が基本だ。
つまり、仕入れや物流などの共通業務を本部で集中処理し、コストを最小化する。店舗はどこも同じ作りで統一し、未経験者でもすぐ作業ができるようマニュアル化することで、店舗を迅速に展開し、チェーンとしての利益を最大化するというものだ。
ここでは、店舗従業員はマニュアルに従って作業をこなす存在であり、人としての個性などは求められていない。そのため、外食業界ではセルフレジや配膳ロボット、調理ロボットなど、省人化・無人化の試みが数多く実施・導入されている。
この業界にはブラックなイメージも付きまとい、実際に過去にはブラックな事例もあったが、それは労働集約的構造の下で「形だけの生産性向上」を求めた結果、労働強化が手っ取り早いという構造によるものだったともいえる。
その意味で、人手不足と人件費高騰という環境は、低賃金労働への依存を不可能とし、AIやロボティクスといったテクノロジーによる代替の転換点になる可能性もある。
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